特発性ALSの疾患感受性遺伝子を発見

提供元:ケアネット

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公開日:2007/09/05

 

筋萎縮側索硬化症(ALS)の約90%を占める特発性ALSについては、複数の環境要因と未解明の遺伝子との相互作用に起因するのではないかといわれているが、発症の一因となる遺伝子についてはほとんどわかっていない。そこで米国アリゾナ州にある遺伝子研究センターTGen(Translational Genomics Research Inst)のTravis Dunckley氏らが、ゲノム解析を行った。NEJM誌8月1日号オンライン版、8月23日号本誌掲載の報告から。

3つの独立したシリーズで試験


本研究は、ALSと診断もしくは見込まれる患者から集められた1,152人分のDNAサンプルを使って行われた。このサンプルを基に「発見シリーズ」と「独立追試験シリーズ1」を、さらに公開サンプルデータセットを利用して「独立追試験シリーズ2」を作成。発見シリーズ(すべて白人、特発性ALS患者386 例、神経学的に正常だった対照542例)で確認された766,955の一塩基多型(SNP)のゲノムワイド関連解析の結果を、2つの追試験で確認する形で行われた。追試験シリーズ1は患者群766例、対照群750例、シリーズ2は患者群135例、対照群275例。

未解明の遺伝子FLJ10986の変異が発症に関わる可能性


結果は、全3シリーズの白人患者・対照群で、特発性ALSと有意に関連(P<0.05)する10の遺伝子座が同定された。さらに、2つのシリーズの白人患者・対照群で有意な関連があるもとされる41の遺伝子座が同定された。

また白人患者群では対照群と比較して、FLJ10986と呼ばれる未解明の遺伝子近くのSNPで最も有意な関連が発見された(P=3.0×10(-4)、遺伝子型を持つかどうか患者対対照オッズ比1.35、95%信頼区間1.13-1.62)。この未解明の遺伝子FLJ10986タンパクは、患者および対照群の脊髄と脳脊髄液で確認された。

さらに特異的なSNPについて、性、年齢、発症部位との関連が見いだされている。

Dunckley氏らは、「FLJ10986の変異が、特発性ALSの疾患感受性を有している可能性がある。FLJ10986とその他50の候補遺伝子座について、潜在的なその役割をさらに調査する必要がある」と結論付けた。

(武藤まき:医療ライター)