末期COPDに対する肺移植、片肺よりも両肺移植で生存期間が延長

提供元:ケアネット

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公開日:2008/03/20

 



慢性閉塞性肺疾患(COPD)の末期例に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうが生存期間が長いことが、パリ第7大学Bichat病院肺移植部のGabriel Thabut氏らの研究で明らかとなった。2006年のInternational Society for Heart and Lung Transplantationの国際登録に関する報告では、1995年1月~2005年6月に実施された肺移植のうち46%がCOPDの治療として行われているが、片肺と両肺移植のいずれがより有効かは不明であった。Lancet誌2008年3月1日号掲載の報告。

1987~2006年に肺移植を受けたCOPD患者9,883例のデータを解析




研究グループは、International Society for Heart and Lung Transplantationの登録データを解析、片肺移植と両肺移植ではいずれの生存期間が長いか検討した。

1987~2006年の間に肺移植を受けた9,883例のCOPD患者のうち、3,525例(35.7%)が両肺移植を、6,358例(64.3%)が片肺移植を施行されていた。選択バイアスを解決する統計手法として、共分散分析、傾向スコア(propensity-score)によるリスク補正、傾向ベースのマッチングを用いた。

生存期間中央値が両肺移植で有意に延長




肺移植を受けたCOPD患者全体の生存期間中央値(MST)は5.0年であった。1998年以前に移植を受けた症例のMSTが4.5年であったのに対し、1998年以降に受けた症例では5.3年と有意な差が認められた(p<0.0001)。

両肺移植例は1993年の21.6%(101/467例)から2006年には56.2%(345/614例)に増加していた。両肺移植後のMSTは6.41年であり、片肺移植の4.59年に比べ有意に延長していた(p<0.0001)。

移植前の患者背景は両群間で異なっていたが、ベースラインの差の補正をいずれの統計手法で行った場合も、片肺移植より両肺移植でMSTが長かった。すなわち、ハザード比の範囲は共変量解析の0.83(95%CI:0.78~0.92)から傾向ベースのマッチングの0.89(0.80~0.97)までであり、いずれも有意差を認めた。しかし、60歳以上の患者では、両肺移植のベネフィットはほとんど見られなかった(0.95、0.81~1.13)。

Thabut氏は、「COPD患者に対する肺移植では、片肺移植よりも両肺移植のほうがMSTが長く、特に60歳以下の症例で延長していた」と結論し、「進行肺疾患に対する移植臓器の割り当ての社会的ベネフィットを検討する際は、COPD患者に対する両肺移植の生存ベネフィットに重きを置くべきであろう」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)