HIVとHCV重複感染者、肝線維化進むほど肝細胞がんや死亡リスク増大

提供元:ケアネット

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公開日:2012/08/07

 

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)とC型肝炎ウイルス(HCV)の重複感染者では、肝線維化が進んでいるほど末期肝疾患・肝細胞がん・死亡の複合リスクが増大することが明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンス大学のBerkeley N. Limketkai氏らが、600人超の患者について行った、前向きコホート試験の結果明らかにしたもので、JAMA誌2012年7月25日号で発表した。

638人を中央値5.8年追跡
研究グループは、HIVとHCVの重複感染者で、ジョンズ・ホプキンスHIVクリニックで診察を受けている638人(黒人80%、男性66%)について、1993年7月~2011年8月まで、前向きに追跡した。

追跡期間中央値は5.82年(四分位範囲:3.42~8.85)だった。肝線維化ステージについては、METAVIRスコアシステムで評価した。

主要アウトカムは、末期肝疾患、肝細胞がんまたは死亡の複合アウトカム発生率だった。

結果、試験開始時の肝線維化ステージが高いほど主要アウトカム発生率も増加することが示された。主要アウトカム発生率は1,000人・年当たり、肝線維化ステージF0の人は23.63、F1では36.33、F2は53.40、F3は56.14、F4は79.43だった(p<0.001)。

METAVIRスコアF0に比べ、F4では複合リスクが約3.6倍に
多変量負二項回帰分析の結果、試験開始時の肝線維化ステージF2~F4と抗レトロウイルス治療は、注射薬使用やCD4細胞数などを補正後、主要アウトカム発生に関する独立因子であることが示された。

主要アウトカム発生に関する罹患率比は、肝線維化ステージがF0の人に比べF2では2.31(95%信頼区間:1.23~4.34、p=0.009)、F3では3.18(同:1.47~6.88、p=0.003)、F4では3.57(同:2.06~6.19、p<0.001)だった。

HIV治療を受けている人は、受けていない人に比べ、同罹患率比は0.27(同:0.19~0.38、p<0.001)と大幅に低かった。

HCV治療を受けていた226人のうち、治療反応不良患者と未治療患者のイベント発生率に有意な差はなかった[発生率(RR):1.27、95%信頼区間:0.86~1.86、P=0.23]。

一方で、SVR(Sustained Virologic Response)だった36人と再発だった15人の計51人ではイベントが認められず、有意な線維化が認められたのは19人だった。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)