マラウイの小児の重症の貧血に対するWHO勧告は限定的

提供元:ケアネット

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公開日:2008/03/12

 

アフリカの子供たちにとって、重症の貧血は疾病罹患や死亡の主因になっているが、この集団の貧血の原因は、これまで十分に研究されていなかった。エマ小児病院(オランダ)のJob C. Calis氏らは、ウエルカム・トラストの臨床研究プログラムの援助を得て現地調査を行い、一般に貧血の原因とされる鉄と葉酸欠乏は主因ではないとして、WHOの推奨する葉酸サプリメントの効用に疑問を投げかけている。NEJM誌2008年2月28日号より。

都市部と農村部で重症貧血の原因因子を比較対照




マラウイの都市部と農村部の未就学児のうち、それぞれ重症の貧血(ヘモグロビン濃度<5.0g/dl)小児381例と、そうではない小児757例の症例対照研究を行い、従来から重症の貧血に関連するとされる原因因子について検討した。データは、多変量解析と構造方程式モデリングによって分析された。

菌血症やマラリア、ビタミンB12欠乏症も関係




重症の貧血に関係していたのは、菌血症(補正オッズ比5.3、95%信頼区間:2.6~10.9)、マラリア(同2.3、1.6~3.3)、鉤虫(同4.8、2.0~11.8)、ヒト免疫不全ウイルス感染(同2.0、1.0~3.8)、G6PD−202/−376遺伝子疾患(同2.4、1.3~4.4)、ビタミンA欠乏症(同2.8、1.3~5.8)とビタミンB12欠乏症(同2.2、1.4~3.6)だった。

しかし、葉酸欠乏や鎌状赤血球症と異常炎症反応を示す臨床検査所見はまれだった。鉄欠乏も症例患者では一般的でなく(同0.37、0.22~0.60)、菌血症とは負の相関関係にあった。

マラリアは、季節的に流行する都市部では重症の貧血を伴ったが、全域で蔓延している農村部ではそうではなかった。鉤虫感染の76%は、2歳未満の小児に認められた。

このためCalis氏らは、マラウイの未就学児によく見られる重症の貧血には複数の要因があり、葉酸と鉄欠乏は突出した原因ではない。マラリア原虫の寄生が判明しても、重症の貧血の原因は追加的、代替的に考慮されなければならないとして「鉄と葉酸サプリメントを推奨し、菌血症やビタミンB12欠乏と鉤虫感染を無視する現在の処置勧告は、適用性が限られているようだ」と指摘している。

(朝田哲明:医療ライター)