やっぱりメタボは癌になりやすい!?

提供元:ケアネット

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公開日:2008/02/28

 

体重超過(過体重:BMI 25~29.9kg/m2および肥満:BMI≧30 kg/m2)は、食道癌、膵癌、結腸・直腸癌、閉経後乳癌などの一般的に見られる癌の発症と関連することが示されている。今回、英国Manchester大学癌研究部門外科のAndrew G Renehan氏らが行った28万例を超える癌患者を対象としたメタ解析により、比較的まれな癌もBMIの増加と関連しており、性差や人種差が見られる癌も存在することが明らかとなった。Lancet誌2008年2月16日号掲載の報告。

体重と癌の関連を検討した28万2,137例のデータを解析




研究グループは、2007年11月までにMedlineおよびEmbaseに登録された文献から体重と15部位20種の癌の関連についてプロスペクティブに検討した研究を系統的に検索した。BMIの5 kg/m2増加と発癌リスクの関連を評価するために、変量効果(random-effect)のメタ解析およびメタ回帰分析を用いた。

141論文の221のデータセットが抽出され、解析対象は28万2,137例(男性:15万4,333例、女性:12万7,804例)、フォローアップは1億3,300万人年以上に達した。部位別の平均フォローアップ期間は、8.4年(乳癌)~14.4年(多発性骨髄腫)であった。

生物学的メカニズムの研究に有益な情報を提供




BMIの5 kg/m2増加と強い相関を示した腫瘍として、男性では食道癌(リスク比:1.52、p<0.0001)、甲状腺癌(1.33、p=0.02)、結腸癌(1.24、p<0.0001)、腎癌(1.24、p<0.0001)が、女性では子宮内膜癌(1.59、p<0.0001)、胆嚢癌(1.59、p=0.04)、食道癌(1.51、p<0.0001)、腎癌(1.34、p<0.0001)が確認された。

BMIの増加と弱い相関(リスク比<1.20)を示した腫瘍として、男性では直腸癌、悪性メラノーマが、女性では閉経後乳癌、膵癌、甲状腺癌、結腸癌が確認された。また、白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫は、男女ともに弱い相関が見られた。結腸癌とBMI増加の関連は女性よりも男性で有意に強かった(p<0.0001)。

北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア太平洋地域の試験において、BMIの増加と特定の腫瘍の関連性は全般に類似していたが、アジア太平洋地域では他の地域に比べBMI増加と閉経前乳癌に強い相関を認め(p=0.009)、閉経後乳癌にも相関の傾向が見られた(p=0.06)。

Renehan氏は、「BMIの増加は一般的な癌だけでなく、比較的まれな癌とも相関し、いくつかの癌ではBMI増加との関連に性差や人種差が認められた」と結論し、「これらの疫学的観察データは、肥満が発癌と関連する生物学的メカニズムの探索的研究に有益な情報を提供するものである」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)