急性冠症候群患者における新規抗血小板剤prasugrelのフェイズ3報告

提供元:ケアネット

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公開日:2007/11/28

 

本論文は11月4日の米国心臓協会・学術集会での発表と同時にNEJM誌オンライン版にて掲載されたもので、イーライリリー社と第一三共とが共同開発している新しいチエノピリジン系の抗血小板剤prasugrelとクロピドグレルとを比較する、国際的な二重盲検試験のフェイズ3であるTRITON TIMI-38からの報告。本誌では11月15日号に掲載された。

急性冠症候群患者を両治療群に無作為割り付け




両剤を比較するため、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を予定している中~高リスク群の急性冠症候群患者13,608例を、prasugrel投与群(初期投与量60mg、維持量10mg/日)またはクロピドグレル投与群(初期投与量300mg/日、維持量75mg/日)にランダムに割り付け、それぞれアスピリンとの2剤併用抗血小板療法が6~15ヵ月間にわたって行われた。

有効性に関する主要エンドポイントは、心血管系起因の死亡、または非致死的心筋梗塞あるいは非致死的脳卒中による死亡とし、安全性に関する主要エンドポイントは大出血とした。

心筋梗塞、血栓症発生率は低下するも致死的出血の増加をみる




有効性の主要エンドポイントは、クロピドグレル群12.1%に対しprasugrel群では9.9%で出現した(ハザード比0.81、95%信頼区間:0.73~0.90、P<0.001)。またprasugrel群では、心筋梗塞発生率(クロピドグレル群9.7%対prasugrel群7.4%、P<0.001)、標的血管の緊急血管再建術施行率(3.7%対2.5%、P<0.001)、ステント血栓症発生率(2.4%対1.1%、P<0.001)で有意な低下が認められた。

大出血は、prasugrel群では2.4%、クロピドグレル群は1.8%で観察された(ハザード比1.32、95%信頼区間:1.03~1.68、P=0.03)。同様にprasugrel群では、非致死的出血(1.1%対0.9%、ハザード比1.25、P=0.23)、致死的出血(0.4%対0.1%、P=0.002)を含む生命に危険のある出血の発生率がクロピドグレル群より大きかった(1.4%対0.9%、P=0.01)。

これら結果から、PCIを予定していた急性冠症候群患者へのprasugrel投与は、ステント血栓症を含む虚血性イベントの発生率を有意に低下させるものの、一方で大出血のリスク増加を伴うため、両治療群間の総死亡率に有意差はみられなかったとまとめている。

(朝田哲明:医療ライター)