CETP阻害薬の臨床的有用性は…

提供元:ケアネット

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公開日:2012/11/19

 

 ケアネットでは、11月3~7日に開催されたAHA(米国心臓協会)学術集会での注目演題を速報した。その一つとして、CETP阻害薬によるHDL-C増加が心血管イベント抑制に及ぼす効果について報じたが、この発表に対する吉岡 成人氏(NTT東日本札幌病院 内科診療部長)のコメントを得たため合わせて掲載する。

吉岡 成人氏(NTT東日本札幌病院 内科診療部長)のコメント
 コレステロール・エステル転送蛋白(CETP)は、末梢組織から受け取ったHDL-コレステロール(HDL-C)のコレステロール・エステルをVLDL、LDLに転送し、コレステロールをリサイクル(再利用)するという重要な役割を担っている蛋白である。そのため、CETPを阻害することでHDL-Cへのトリグリセリド転送やLDLへのコレステロール転送を抑制し、HDL-Cの増加やLDL-Cの減少をもたらすことが考えられ、CETP阻害薬がポストスタチンの一翼を担う脂質治療薬として期待されている。

 CETP阻害薬としては、ファイザー、JT(ロッシュとの共同開発)、メルク、リリーの各社がトルセトラピブ(torcetrapib)、ダルセトラピブ(dalcetrapib)、アナセトラピブ(anacetrapib)、エヴァセトラピブ(evacetrapib)をそれぞれ開発している。しかし、トルセプトラピブは5mmHg程度の血圧上昇と心血管イベントと総死亡の増加のため臨床第III相試験が中止され、ダルセトラピブについても45歳以上の安定した急性冠症候群(ACS)患者を対象とした第III相試験(dal-OUTCOMES試験)では効果が不十分として2012年6月に中止されている。

 今回の報告はdal-OUTCOMESの最終報告であるが、スタチンやアスピリン、抗血小板薬、レニン・アンジオテンシン系阻害薬によって十分に治療されている患者では、CETP阻害によってHDL-Cを増加させ、脂質プロフィールが改善しても、そのことによる相加的な効果はないことが確認されたといえる。