習慣流産の一因に「精子のDNA異常」
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- HealthDay News
- 公開日:2019/01/29
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何度も繰り返す習慣流産には、男性の精子のDNA異常が原因である可能性があることが、英インペリアル・カレッジ・ロンドンのChanna Jayasena氏らによる研究で明らかになった。同氏らは、この結果は、流産リスクを低減する新たな治療法の開発につながるのではと期待を示している。詳細は「Clinical Chemistry」1月号に掲載された。
Jayasena氏は「一般的に、何度も流産を繰り返す習慣流産の原因は女性にあると考えられ、男性の精液の状態を検査することはほとんどなかった。しかし、この研究によって、精子の健康状態が妊婦の健康状態に影響するというエビデンスが新たに加わった」と説明している。例えば、胎児に酸素や栄養素を供給するのに不可欠な胎盤の形成に、精子が重要な役割を果たしていることなどが、これまでの研究で示唆されているという。
Jayasena氏らは今回、流産を続けて3回以上繰り返している女性のパートナー50人の精子の質を分析した。その結果、流産を経験したことがない女性のパートナーと比べて、繰り返し流産した女性のパートナーでは、DNAが損傷した精子の割合(精子のDNA断片化率)が2倍であることが分かった。
精子のDNA損傷は活性酸素種(ROS)と呼ばれる分子が原因ではないかと考えられている。精液中のROSは精子を細菌感染から守る働きを持つが、高濃度になると精子のDNAにダメージを与える可能性があるという。
この研究では、流産経験がない女性のパートナーと比べて、繰り返し流産した女性のパートナーでは、精液中のROS濃度が4倍であることも明らかになった。
Jayasena氏らは、ROS濃度が高まる原因については現在、調査中だとしているが、「研究に参加した男性の中に、精子の質に影響するクラミジアなどの感染症に罹患している人は一人もいなかった。ただし、研究が始まる前にクラミジア以外の細菌に感染し、精液をつくる前立腺の中に細菌が残存していた可能性はある。その場合には、永続的にROSが高濃度の状態となりうる」と説明している。
今回の研究はこれらの関連を示したに過ぎず、研究規模も小さかった。それでも、Jayasena氏は「この研究によって手がかりは得られた」と話し、「精液中のROS濃度が高いと流産リスクが高まることが今後の研究で確認されれば、ROS濃度を下げることで妊娠を継続できるような治療法の開発につなげられるかもしれない」と期待を示している。
[2019年1月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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