宇宙環境に適応する細菌、人類への脅威は?

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 多くのSF映画の恐ろしいストーリーに反して、宇宙では細菌が人類を脅かす微生物に変異するのを心配する必要はないようだ。米ノースウェスタン大学環境工学のErica Hartmann氏らが実施した研究で、宇宙の過酷な環境下では、細菌は環境に適応して変化を遂げうるが、多剤耐性菌に突然変異する確率は低いことが示された。詳細は「mSystems」1月8日号に発表された。

 Hartmann氏は「放射線や微小重力、換気ができない環境が細菌を含む生物に与える影響をめぐっては、さまざまな憶測が飛び交っていた。ストレスの大きい過酷な条件下では、より有利な多剤耐性菌へと変異するという説もあるが、それは仮説に過ぎないようだ」と述べている。

 Hartmann氏らは今回、米国立生物工学情報センターが公開している国際宇宙ステーションで検出された多くの細菌のデータベースを用いて、今回、宇宙で検出された黄色ブドウ球菌およびセレウス菌の菌株のデータを比較した。細菌は、宇宙飛行士や貨物を介して宇宙スーションに持ち込まれたと考えられた。

 その結果、宇宙ステーションで検出された細菌には、地球上の細菌とは異なる遺伝的特徴がみられ、過酷な環境下で進化を遂げていたことが分かった。しかし、これらの細菌が多剤耐性菌に変異したという証拠は見つからなかった。

 論文の筆頭著者で、Hartmann氏の研究室に所属するRyan Blaustein氏は「遺伝子解析の結果に基づくと、細菌は宇宙でも環境に適応して生き延びるが、多剤耐性菌に突然変異するわけではないようだ。宇宙ステーションで検出された細菌に、抗菌薬への耐性や病原性に関する特別な変異はみられなかった」と述べている。

 この結果は良い知らせだといえるが、宇宙ステーションや宇宙船の中では感染症は広がらないことを意味するものではない。Hartmann氏は「人間が行く場所には必ず病原菌が運び込まれるものだ。宇宙飛行士になるには健康状態が極めて良好であることが条件になるが、この基準を満たさない一般人が宇宙旅行をするようになれば、何が起こるか分からない」と指摘する。その上で、「感染症に罹患した人が宇宙の閉じられた空間に入れば、他の人に感染症がうつらないとは言い切れない」と話している。

 最近では、火星への旅行や移住に向けた本格的な検討が始まっており、Hartmann氏によれば、この種の研究はさらに重要性を増しているという。同氏は「宇宙では窓を開けたり、外に出たり、換気もできない。こうした環境が微生物に与える影響が懸念される」と話している。

[2019年1月8日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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