高齢者の転倒予防に「太極拳」が有効?

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HealthDay News

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 高齢者の転倒予防には、筋力トレーニングやエアロビクスよりも太極拳の方が優れている可能性があることが、約600人の高齢者を対象に行ったランダム化比較試験で明らかになった。詳細は「JAMA Internal Medicine」9月10日オンライン版に掲載された。

 米国では、年間に高齢者の約28%が転倒を経験し、5件のうち2件は救急受診や入院を要し、最悪の場合には死亡に至るとされる。また、65歳以上で転倒すると自立した生活が送れなくなったり、早期死亡や医療費の増大と有意に関連することが知られている。

 太極拳は古代から伝わる中国武術の一種で、一定のリズムでバランスを取りながら一連のポーズを流れるように行う。論文著者の一人で米ウィラメット大学運動・健康科学科教授のPeter Harmer氏によると、太極拳による転倒リスクの低減効果については長年、検討されてきたという。

 しかし、伝統的な太極拳には100種類以上の動きがあり、一般人が覚えるのは難しい。そこで、研究チームは転倒予防に関連した8種類の基本的な動きに絞った簡略版を開発。米オレゴン州に在住し、転倒の既往があるなど転倒リスクが高い70歳以上の高齢者670人(平均年齢77.7歳、女性65%)を対象に、太極拳プログラムを行う群または筋力トレーニングとエアロビクスを組み合わせた従来の運動プログラムを行う群、ストレッチのみを行う対照群の3つの群にランダムに割り付けて比較検討した。それぞれ60分の運動クラスを週に2回、24週間続けてもらった。

 その結果、6カ月後の転倒の発生率は、ストレッチのみを行う対照群に比べて、太極拳を行った群では58%低かったのに対し、従来の運動プログラムを行った群では40%低いことが分かった。また、太極拳を行った群では、従来の運動プログラムを行った群に比べて転倒の発生率は31%低いことも明らかになった。

 従来の運動プログラムは前後方向の動きが中心なのに対し、太極拳ではあらゆる方向への動きが求められる。論文の共著者で米オレゴン健康科学大学看護学部教授のKerri Winters-Stone氏は「転倒の起こり方はさまざまで予測できない。太極拳では体を重心の外側へ移動させ、また引き戻す動きを行う。そのため、太極拳を経験している人は転びそうになると、その動きに逆らって素早くバランスを取り戻せるのではないか」と説明している。

 今回の結果からは、高齢者の転倒予防には太極拳が優れていることが示された。しかし、理学療法やリハビリテーションを専門とする米メイヨー・クリニックのNathan LeBrasseur氏は「転倒を予防するには従来の運動でも十分に有効であるため、筋肉トレーニングやエアロビクスを行っている人はぜひ続けてほしい」と話している。

 Harmer氏によると、転倒した経験のある人は、再び転ぶことを恐れて体を動かさなくなることも転倒のリスク因子であることが分かっているという。「今回行った太極拳プログラムは、こうした負のサイクルを断ち切るのに適している」と同氏は話している。LeBrasseur氏もこの考えに同意し、「高齢者は自分の健康のためには種類は問わず、もっと運動をすべきだ」と述べている。

[2018年9月10日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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