落雷で脳深部刺激装置が停止した事例の報告

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HealthDay News

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 脳深部刺激療法は、進行したパーキンソン病やその他の運動性疾患に対する確立した治療法である。しかし、近くで発生した落雷により植込み型装置の電源が切れてしまうという事例がヨーロッパで1件報告された。論文著者の一人であるリュブリャナ大学(スロベニア)のDusan Flisar氏は「雷雨はよくある自然現象であるため、今回の事例は落雷の危険性に目を向けさせるものである」と述べている。この論文は「Journal of Neurosurgery」5月1日オンライン版に掲載された。

 この電池式の機器は神経刺激装置、脳深部刺激装置、植込み型パルス発生器(IPG)などと呼ばれ、パーキンソン病などの運動障害のほか、一部の精神障害の治療に用いられる。IPGは一般に上胸部の筋肉または皮膚の下に植え込まれ、そこから治療標的となる脳領域に電気パルスを送るが、これまでの研究から、IPGは職場や自宅、病院で電気機器から発生する電磁場により影響を受けることが分かっている。今回の事例は、新たに落雷がIPGの機能に影響を及ぼす可能性を示すものである。

 研究グループによると、この現象を経験した66歳の女性は頸部ジストニア(痛みを伴う不随意の筋収縮が起こる疾患)の治療のため脳深部刺激装置を植え込み、5年間使用していたが、あるとき女性の自宅の電気回路網を落雷が直撃した。その際、家にあったテレビやエアコンなどは黒焦げになり壊れたという。雷雨が収まった1時間後、女性はジストニアによる振戦が再発していることに気づいた。

 IPGの患者用コントローラーを確認すると警告が表示されていたため、クリニックへ持って行くと電源が切れていることが分かった。幸いIPGは壊れておらず女性にも神経学的傷害はなかった。装置の電源を入れると振戦はほぼ消失し、頸部ジストニアの症状は改善したという。

 このような報告はまだ1件のみだが、「(IPGを使用する)患者にはアーク溶接設備、発電機、変電所、アマチュア無線アンテナ、送電線、工業用炉、誘導加熱器、抵抗溶接機、送電塔などの強い電磁場の発生源となる環境を避けるよう、定期的に警告していく必要がある」とFlisar氏らは指摘している。

 専門家の一人で米レノックス・ヒル病院のGayatri Devi氏は「旧型の心臓ペースメーカーや脳のシャント術(brain shunt)など、その他の植込み型装置もMRIなどによる強い磁場に曝露すると機能不全を起こすことがある。しかし、最近の装置にはMRIの影響はないようだ」と話している。

[2018年5月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら

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