精神療法中のうつ病および不安症状の変化

提供元:ケアネット

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公開日:2019/05/16

 

 精神療法での治療効果の40%は、3回の治療セッションによる症状変化で説明されるものと推定されている。しかし、この変化は、患者群および症状により一様ではないと考えられる。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのRob Saunders氏らは、精神療法中のうつ病および不安症状の変化が異なる患者をサブグループに分類し、これらの違いと関連付けられるベースライン時の患者の特性について調査を行った。Journal of Affective Disorders誌2019年4月15日号の報告。

 対象は、2つの精神療法サービスにおいてセッションを完遂し、自己報告のうつ病および不安を測定した患者4,394例。症状変化の推移は、潜在クラス成長分析を用いて調査した。ベースライン時の患者特性と症状推移との関連性は、多項ロジスティック回帰を用いて調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・多くの異なる推移が観察された。
・不安症状の推移は、3回目の治療セッションで分類可能であったが、うつ症状は、6回目のセッションまでは限定された変化しか示さず、その後、症状の急速な改善が認められた。
・治療反応の認められた患者におけるうつ病および不安の推移は、治療反応のない場合と比較し、ベースライン時の重症度の低さ、社会的機能良好、恐怖症性不安の発生率の低さと関連が認められたが、薬剤処方との関連は認められなかった。
・本研究の限界として、データは2つの精神療法サービスからの情報であり、定期的に収集されていない因子が症状の推移に影響を及ぼした可能性がある。

 著者らは「ベースライン時の患者特性と治療初期の症状変化は、症状変化の推移を特定するうえで役立つであろう。このことは、臨床での意思決定の助けとなり、治療アウトカムの改善に役立つと考えられる。臨床医は、患者ごとに症状変化の推移が異なることを考慮し、患者に利益をもたらす可能性のある治療法を不用意に変更または終了させないよう、注意しなければならない」としている。

(鷹野 敦夫)