申告や支払いなしの残業ゼロへ、労務管理の徹底求める~働き方改革

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ケアネット

申告や支払いなしの残業ゼロへ、労務管理の徹底求める~働き方改革のイメージ

 医師の時間外労働規制の方向性について議論する、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会(第18回)」が、2月6日開催された。上限規制がスタートする2024年4月までの5年間の具体的な流れ、現状案に基づく場合の勤務医の働き方の変化(イメージ)、健康確保措置案としての“代償休息”の設定などが事務局から示され、構成員らが議論を進めた。

上限は“バイトも含む労働時間”という位置づけ
 まず前提として、これまでの議論で提示された、原則:月100時間未満・年960時間以下(A)、特例:月100時間未満・年1,900~2,000時間以下(B)という案は、あくまで「臨時的な必要がある場合」に36協定上で規定できる上限時間数であることを整理(一般労働者では[休日労働を含まない形で] 月100時間未満・年720時間以下)。それ以外の平時については、一般労働者同様の数字(月45時間・年360時間)を原則としてはどうか、という事務局案が示された。

 なお、これらの労働時間数にはアルバイトの時間も含む、という認識が事務局側から示されている。これに対し、構成員からは「日本の地域医療では、とくに中小の病院はアルバイトの医師が支えている。大学病院勤務の医師のうち、地域でアルバイトしていない医師はほぼおらず、生計を担う側面もある(岡留 健一郎氏、福岡県済生会福岡総合病院 名誉院長)」、「地域の当直医はほぼ大学病院から派遣されている。“時間制限で行けません”となったら成り立たない(山本 修一氏、千葉大学医学部附属病院 院長)」などの指摘が相次ぎ、「労働時間通算の考え方については、改めて整理してから具体案として示していくべきでは(森本 正宏氏、全日本自治団体労働組合総合労働局長)」と慎重な検討を求める声があがった。

規制開始までの5年間、何が行われていくのか
 特例を認める(B)水準の医療機関をどうやって決めるのかを含め、規制をスタートさせるための前提としての準備期間が非常に重要になる。2024年4月までの5年間の基本的な方向性として、「医療機関は自らの状況を適切に分析し、計画的に労働時間短縮に取り組んでいく必要があり、なるべく多くの医療機関が(A)水準の適用となることを目指す」とされた。

 そのうえで、下記3つのステップが具体的な流れとして示されている。

[ステップ1:労働時間管理の適正化]
・まず、各医療機関において時間外労働時間の実態を的確に把握する必要がある。「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」のフォローアップ調査においても、労働時間管理にかかる取組が全医療機関で適切に行われている状況には程遠いため、個別の状況確認を含めた強力なてこ入れを行う。
・また、本検討会で議論した宿日直や研鑽の取扱いについて、通達の発出とともに、その周知をきめ細かく行う。

[ステップ2:適用される上限水準の検討]
・そのうえで、各医療機関は5年間で医師の労働時間を着実に短縮する必要があるが、その「短縮幅」は、適用される上限の水準によって変わってくる。(B)水準の適用対象となる地域医療提供体制における機能を有するかどうか、また、やむなく長時間労働となり(A)水準まで到達できないか等について、各医療機関において現状および5年後を見通して検討する必要がある。

[ステップ3:医師の労働時間短縮の取組]
・実際に医師の労働時間を短縮していくべく、各医療機関において医師労働時間短縮計画を作成し、PDCAサイクルによる取り組みを進めていく必要がある。

 また、(B)水準となる医療機関については、遅くとも2023年度中に、都道府県知事による特定が終了している必要がある、とされた。

都度/時間単位での取得が可能な“代償休息”を提案
 設定された連続勤務時間制限・勤務間インターバルを、日々の患者ニーズ等からやむなく守れなかった場合の健康確保措置として、今回新たに“代償休息”を設けてはどうかという事務局案が示された。当案について示された具体的内容としては以下の通り。

 1~2日単位で確実に疲労を回復していくべきという発想に立ち、
・1日の休暇分(8時間分)が累積してからではなく、発生の都度・時間単位での休息をなるべく早く付与する
・休暇の形でまとめて取得することも認める
 その付与方法は、対象となった時間数について、
・所定労働時間中における時間休の取得による付与
・勤務間インターバルの幅の延長
 のいずれかによることとし、代償休息を生じさせる勤務が発生した日の属する月の翌月末までに必ず付与する。

 構成員からは、勤務医の立場から負担軽減に役立つとして評価する声、使用者の立場から細切れの時間管理の大変さを指摘する声があがった。また、「便利な仕組みだとは思うが、これは有給という受け取り方でよいか?(黒澤 一氏、東北大学環境・安全推進センター 教授)」という疑問を受け、事務局は「労使の取り決めにより有給でも無給でもあり得るのではないか」と回答した。

勤務医の働き方は大きく変化? しかし実現には課題も
 最後に、今回示された(現状案を前提とした場合の)「想定される働き方の変化イメージ(勤務医からみて)」を以下、紹介する。

・当直明けも夕方までは連続勤務/夜遅くなっても翌朝は早いという現状
→時間外労働が年960時間を超える医師に対しては、「連続勤務時間制限28時間・インターバル9時間確保」が義務化され、休息を確保

・厚労省調査で1人平均約40分/日あるとされた「医師でなくてもできる仕事」
→医師は医師でなければできない仕事に集中。この実現のため、「緊急的な取組」で求めている基本のタスク・シフティング項目(初療時の予診、検査手順や入院の説明等)は必ず行う。

・労働時間管理がされていない、勤務時間に見合った支払いがされていないという現状
→労働時間がきちんと管理されるようになる。時間外割増賃金がきちんと支払われるようになる(寝ることができない、宿日直許可を受けていない当直は待機時間も含め時間外労働とみなされる)。

 これらの明示を受け、黒澤氏は「これまで把握されていなかった労働時間がある中で、把握することで賃金を支払う必要が生じ、またタスクシフトに伴うコメディカルへの報酬等含めると、経営上多大なお金がかかると思われる。仕組みの中で何らかのサポートがないと難しいのではないか」と指摘している。

 今後は、事務局側に提示が要請されている、より詳細な労働時間分析データをもとに、上限時間数の最終決定などが進められていく見通しとなっている。

■参考
厚生労働省「第18回医師の働き方改革に関する検討会」資料

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(ケアネット 遊佐 なつみ)

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