高齢者の肥満診療はどうすべきか

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/01/04

 

 2018年12月18日に一般社団法人 日本老年医学会(理事長:楽木 宏実氏)は、同会のホームページにおいて『高齢者肥満症診療ガイドライン2018』(作成委員長:荒木 厚氏)を公開した。

 本ガイドラインは、同会が作成方針を打ち出している「高齢者生活習慣病管理ガイドライン」、すなわち 「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「肥満症」のガイドラインの第4弾にあたり、日本肥満学会の協力を得て作成されたものである。作成では既刊の『肥満症診療ガイドライン2016年版』を参考に、認知症・ADL低下の観点から新たにクリニカルクエスチョン(CQ)を設定し、システマティックレビューを実施したものとなっている。
 

17のCQで肥満症診療に指針

 ガイドラインでは、「肥満または肥満症の診断」「肥満症の影響」「肥満症の治療」と全体を3つに分け、各項目でCQを設定している。とくに「肥満症の影響」は厚く記載され、肥満と認知症リスク、運動機能低下、循環器疾患との関係が記されている。

 具体的に「肥満または肥満症の診断」では、肥満症の特徴について「高齢者ではBMIが体脂肪量を正確に反映しないことが少なくないこと」「BMIよりもウエスト周囲長やウエスト・ヒップ比が死亡リスクの指標となること」「内臓脂肪が加齢と共に増加すること」などが記されている。

 「肥満症の影響」では、「高齢期の認知症のリスク」について、「中年期の肥満は高齢期の認知症発症のリスクであるので注意(推奨グレードA)」とする一方、「高齢者の肥満は認知症発症リスクとはならず、認知症発症リスクの低下と関連する」としている。また、「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べ、ADL低下・転倒・骨折、死亡のリスクとなるか」では、「サルコペニア肥満は単なる肥満と比べてよりADL低下・転倒・骨折、死亡をきたしやすいので注意する必要がある(推奨グレードA)」とし注意を促している。

 「肥満症の治療」では、「生活習慣の改善で体重、BMIを是正することでADLや疼痛、QOLは改善するか」について、「ADL低下、疼痛、QOLを改善することができる(推奨グレードB)」としているほか、「肥満症を治療すると認知機能は改善するか」では、「認知機能は改善する可能性がある(推奨グレードB)」などが記されている。

 本ガイドラインの詳細については、同会のホームページで公開されているので参照にしていただきたい。

(ケアネット 稲川 進)