手術室を滅菌空間から単体医療機器に「スマート治療室」/脳神経外科学会

提供元:ケアネット

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公開日:2018/10/30

 

 手術室では、手術に関わる人間が医療機器や設備からの膨大な情報を、限られた時間で判断しながら、治療を行っている。そうした治療現場においてIoTを活用して医療機器や設備を接続し、手術や患者の状況と共に時系列に統合し、それを手術室内外で共有することで、治療の効率と安全性を向上させる「スマート治療室」の開発が、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)主体で進められている。このスマート治療室は「SCOT(Smart cyber operating theater)」と名付けられ、東京女子医科大学を中心に、5大学11企業による産学連携のプロジェクトとして進められている。

 「SCOT」は、手術室の機器を、モニタリング、患部診断、治療、手術者の補助/支援など用途ごとにをパッケージ化し、産業用のミッドウェア「ORiN(Open Resource interface for the Network)」をベースに開発された治療用インターフェイス「OPeLiNK」で、手術室内機器・設備を接続する。すでにパッケージ化を実現した「Basic SCOT」が広島大学で、さらに「OPeLink」を備えてネットワーク化を実現した「Standard SCOT」が信州大学に導入されている。そして、本年(2018年)度末、手術ロボット連携など高度な統合を実現した「Hyper SCOT」が、東京女子医科大学に設置される。

 プロジェクトを統括する東京女子医科大学の村垣 善浩氏は、日本脳神経外科学会 第77回学術総会での発表で、従来スタンドアローンだったデータが、ナビゲーションの情報と時間同期されて記録できる。このように空間の情報と時間の情報が同期されることで、質の高いデータを収集可能になる。これら質の高いデータを用い、ロボット化した治療を行い、さらにAIを使った術者の意思決定支援が可能になる、と述べている。

 すでに「Basic SCOT」が販売開始されており、今後も適宜リリースする予定である。また、脳神経外科だけでなく、他領域への横展開、病院全体への縦展開を目指して開発中である。さらに、ロボット化した国産新治療を実装し、自動車に次ぐ輸出の切り札として、治療室産業を創出する、としている。

(ケアネット 細田 雅之)