大きく育て!次世代の健康医学のタネ~日本抗加齢医学会

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2018/10/17

 

 2018年9月27日、日本抗加齢医学会 広報委員会は、都内でメディアセミナーを開催し、ヘルスケアベンチャー大賞事業の創設と第1回の開催概要について説明を行った。

 同学会には、約8,500人の学会員が所属し、学術集会も2019年で19回を迎える。わが国の高齢化にともない健康寿命をいかに延伸するかが課題となっているが、そのための医学的な解決を学会では研究している。

 学会では、わが国の科学的競争力や経済力が低下していくことに鑑み、「医学会からのイノベーション」を合言葉に、今回の事業を創設。セミナーでは、大賞概要などについて説明が行われた。

この大賞が大きな流れのスタート
 はじめに今回の大賞を発案し、担当するイノベーション委員会の委員長である坪田 一男氏(同学会 理事/慶應義塾大学医学部眼科学教室 教授)が、「イノベーション委員会立ち上げとヘルスケアベンチャー大賞 事業の意義とは」をテーマにレクチャーを行った。

 同氏は、わが国の経済成長率が鈍化・低迷する現状を説明、創薬ベンチャーの未成熟(開発品目数:アメリカ334、イギリス38、日本10)を指摘するとともに、今後のわが国の置かれる環境への危機感を示した。

 そのうえで、わが国の将来にとって、「技術革新とビジネス化が掛け合わさることで『社会改革』を起こすイノベーションが必要だ」と語る。とくにイノベーションは大学発だけでなく、「個々人がWEBを武器に挑戦できる時代が到来した。こうした挑戦を応援するために、抗加齢医学会というシーズをもとに新しい可能性を拓くためにイノベーション委員会を立ちあげた」と委員会設立の経緯を語った。

 すでに欧米をはじめとする先進国では、大学内に学部横断の組織があり、医療者が経営を学ぶなどの組織やカリキュラムができ、さまざまなベンチャー企業が誕生していることを紹介するとともに、わが国の後塵を拝する状況に警鐘を鳴らした。

 おわりに同氏は、「健康医療の分野にイノベーションが求められている。この創出の流れを、大学ばかりでなく、医学会も推進する必要がある。とくに抗加齢医学領域は、今後大きなイノベーションが起きると考えられ、わが国発の産業に発展させることが大切。今回の大賞をロールモデルとして、大きな流れのスタートにしてほしい」と期待を示し、レクチャーを終えた。

挑戦者が尊敬される社会
 つぎに森下 竜一氏(同学会 副理事長/大阪大学大学院医学系研究科 臨床遺伝子治療学寄附講座 教授)が、「本事業が求めるものと国の政策とは」をテーマに、産業としての医療の面などから、今回の大賞の意義を説明した。

 ヘルスケア産業は、2000年に2.93兆米ドルだった産業規模が、2010年には6.43兆米ドルと拡大。世界人口の増加と高齢化により、今後も増大を続けていくと説明した。そして、政府も「健康・医療戦略推進本部」を設置し、「健康長寿社会の実現」は成長戦力の要と位置付け、医療分野の研究開発を政府一体で進めていくため、「健康医療戦略法」を制定し、「健康長寿産業の創出・活性化による経済の成長」を進める姿勢であることを説明した。具体的には、各種規制の緩和だけでなく、1,000億円にのぼる官民イノベーションプログラムの実施、診療報酬の改定などを実施していくことになるという。

 最後に同氏は、「イノベーションがないと将来がない。わが国の大学もイノベーションを起こすだけでなく、欧米のようにベンチャー企業を創設し、パテントなどで自立化することも重要だ。挑戦者が尊敬される社会にならなければいけない」と語り、講演を終えた。

 なお、本大賞は、2019年1月25日(金)まで募集されている。

第1回 ヘルスケアベンチャー大賞の概要
・募集テーマ
 抗加齢を目的とした創薬、遺伝子治療、再生医療製品、機能性食品、機能性化粧品など、またはヘルスケアIT(ビッグデータ解析、ディープラーニング、ウェアラブルデバイスなど)の製品、ビジネスプラン

・応募条件
 応募者の内、最低1名は学会員、協会員、協会賛助企業、事業協賛企業が含まれていること(詳細は下記のWEBサイトを参照のこと)

・スケジュール
 応募締切:2019年1月25日(金)  最終選考:2019年6月14日(金)

・賞金/副賞
 賞金:大賞100万円 学会賞30万円
 副賞:起業支援サービス/大学発新産業創出プログラムへの推薦など

・最終選考/受賞会場
 2019年6月14日(金)パシフィコ横浜
 最終選考では5つのテーマを 5分間のピッチ方式で行い、最終選考を実施
 (第19回日本抗加齢医学会総会会場にて発表)

■参考
第1回 ヘルスケアベンチャー大賞
日本抗加齢医学会

(ケアネット 稲川 進)