日本の児童・思春期におけるADHD治療薬の処方率に関する研究

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 児童・思春期における注意欠如多動症(ADHD)の有病率は、地域差が小さいが、ADHD治療薬の処方率には、大きな地域差があるといわれている。薬剤処方の地域差を理解することで、潜在的に過剰または過小な処方の状況に関する示唆が得られる。しかし、日本人におけるADHD治療薬の処方率についてはよくわかっていない。医療経済研究機構の奥村 泰之氏らは、日本の児童・思春期におけるADHD治療薬の処方、新規処方、継続率を明らかにするため、調査を行った。Epidemiology and psychiatric sciences誌オンライン版2018年5月28日号の報告。

 対象は、2014年4月~2015年3月にADHD治療薬であるメチルフェニデート塩酸塩徐放錠(OROS-MPH)、アトモキセチン塩酸塩(ATX)を処方された、18歳以下の患者。厚生労働省が構築している、レセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を活用し、分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・データベースより、ADHD治療薬処方患者8万6,756例、新規処方患者3万449例が抽出された。
・ADHD治療薬の人口1,000人当たりの年間処方率は4.1%(95%CI:4.1~4.2)であり、男女ともに7~12歳でピークが認められた。
・処方患者のうち、64%にOROS-MPHを処方されていた。
・新規処方患者のうち、60.8%(95%CI:60.3~61.4)が150日目において薬物治療を継続していた。
・ADHD治療薬の継続率は、7~12歳で最も高く(64.7%、95%CI:64.0~65.3)、16~18歳(42.8%、95%CI:40.8~44.7)で最も低かった。

 著者らは、本研究結果のポイントとして、以下を挙げている。

【ADHD治療薬の処方率について】
・日本におけるADHD治療薬の人口当たりの年間処方率は、0.4%であった。この処方率は、米国(5.3%)、ノルウェー(1.4%)と比較して低く、イタリア(0.2%)、フランス(0.2%)、英国(0.5%)と同程度であった。
・日本をはじめ処方率の低い国では、ADHD治療薬の処方制限施策を導入している。たとえば、日本では、ADHD治療に精通した医師のみが、OROS-MPHを処方することができる。このような処方制限施策が、相対的に低い処方率に影響を及ぼしていると考えられる。
・ただし、この低い処方率が過小な処方状況の可能性を示唆している点には、留意が必要である。現状の処方が、過小なのか適正であるかについては、さらなる検討が必要である。

【メチルフェニデート(MPH)の処方状況について】
・日本において、ADHD治療薬が処方された患者のうち、64%にOROS-MPHが処方されていた。この処方率は、英国(94%)、ノルウェー(94%)、ドイツ(75~100%)と比較し、著しく低かった。
・日本でMPHの処方が少ない要因として、以下の3点が考えられる。
(1)短時間作用型MPHのADHDに対する承認が得られていない。
(2)ATXに処方制限がない一方で、MPHのみ処方制限がある。
(3)診療ガイドラインにおいて、MPHとATXの両方を第1選択薬としている。

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(鷹野 敦夫)

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