ギラン・バレー症候群の治療に新たな光-千葉大の研究-

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/02

 

 ギラン・バレー症候群は、手足のしびれ・麻痺を急速に生じる末梢神経の病気で、先進国で最も多い急性四肢麻痺の原因だ。日本でも年間約1,400人が発症する。しかし、25年以上にわたり、有効性を示すギラン・バレー症候群の新たな治療法の報告はなく、難病とされてきた。

 今回、千葉大学医学部附属病院 神経内科教授の桑原 聡氏らの研究グループは、ギラン・バレー症候群の患者への臨床試験を行い、薬剤「エクリズマブ」の有効性を世界で初めて示した(Lancet Neurology誌オンライン版2018年4月20日号に掲載)。ギラン・バレー症候群の治療については、1992年に免疫グロブリン療法の有効性がオランダから報告されて以来の進展で、日本から新規治療の可能性を示すことができたのは、今回が初。

ギラン・バレー症候群は患者の約4割が職業変更を迫られる難病
 ギラン・バレー症候群の治療は、回復を早めるために免疫グロブリン療法や血漿交換療法が行われるのが一般的だ。しかし、重症例には、現在の治療法は十分ではなく、強い炎症による大きなダメージが末梢神経に生じる。

 実際、患者の約5%が死亡に至り、約2割は急性期を過ぎた後も重い麻痺や感覚低下が残り、約4割で職業変更を迫られる。そのため、ギラン・バレー症候群の新たな治療が望まれていた。

ギラン・バレー症候群治療6ヵ月で、7割以上が後遺症をほぼ残さずに回復
 今回、桑原氏らの研究グループは、発症間もないギラン・バレー症候群の重症患者34例を対象に、免疫グロブリン療法に加えて、エクリズマブの効果を検討する臨床試験を行った。本研究は、厚生労働科学研究受託事業、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受けて実施された第II相多施設共同前向き試験である。

 結果は、エクリズマブ投与により、ギラン・バレー症候群の治療開始4週時点で自力歩行可能まで回復した患者が61%(従来治療:プラセボ群では45%)、24週時点で走行可能まで回復した患者が74%(プラセボ群では18%)に認められた。

 ただし、推定期待値を下回る結果であったため、統計学的には有意な有効性との結論には至らなかった。

 関連が否定できない重篤な有害事象として、アナフィラキシー、脳膿瘍が認められたが、いずれの患者も回復。死亡、髄膜炎菌感染は認められていない。

ギラン・バレー症候群に対する25年ぶりの新規治療の可能性に寄せられる期待
 桑原氏はこの結果を受け、「本試験は規模も小さく、統計学的に有意と結論できる有効性は検出できなかったものの、治療開始6ヵ月で、7割以上が走ることができるまでに回復したという事実は、ギラン・バレー症候群の克服を予感させる結果である」とコメントしている。

 今後は、検証的な第III相試験に向けた取り組みを行い、最終的には、臨床現場で薬が実際に利用できるようになることを目指すという。

 25年以上進歩のなかったギラン・バレー症候群の新規治療の可能性に、世界中の専門家が大きな期待を寄せている。

(ケアネット 佐藤 寿美)