抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ効果に関する解析

提供元:ケアネット

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公開日:2018/02/08

 

 抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボの反応率は増加し続けていることから、臨床試験の失敗数の増加を招いていると考えられてきた。最近報告された2件のシステマティックレビューで、この問題が調査されており、それぞれの報告で正反対の見解が示された。京都大学の古川 壽亮氏らは、これまでの結果を再検討する解析を行った。Evidence-based mental health誌オンライン版2018年1月12日号の報告。

 主な内容は以下のとおり。

・2016年に発表された古川氏らの論文において、プラセボ反応率は1991年以来、安定しており、2000年までに見られたプラセボ反応率の増加は、試験デザインの特性の変化によるものであったとした。
・対照的に、Khanらはプラセボ反応率が過去30年間で増加していると結論付けていた。
・この2つのレビューは、使用したデータセット、プラセボ反応の定義、統計分析が異なっていた。これらの違いにより、対照的な結論に至ったかどうかについて調査を行った。
・いずれのデータセットおよびプラセボ反応の定義において、研究デザインの特性に関連する交絡因子の分析で調査した場合、または1990年以降に発表された研究に限定した場合では、何年もの間、プラセボ反応率の増加は認められなかった。

 著者らは「抗うつ薬の臨床試験におけるプラセボ反応は、過去25年間安定したままであり、その間、大多数の研究が類似のデザイン特性を共有するようになった」と結論付けている。

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(鷹野 敦夫)