統合失調症患者における抗精神病薬使用と死亡率

提供元:ケアネット

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公開日:2018/02/07

 

 統合失調症における抗精神病薬での治療が、患者の死亡率の増減に関連しているのか、また、特定の薬剤と投与経路との間に臨床的な意味の違いがあるのかは、よくわかっていない。東フィンランド大学のHeidi Taipale氏らは、統合失調症患者に対する抗精神病薬治療と死亡率との関連について検討を行った。Schizophrenia research誌オンライン版2017年12月20日号の報告。

 スウェーデンの統合失調症患者(年齢16~64歳)を、2006~13年の全国レジストリデータより抽出した(全例:2万9,823例、インシデントコホート:4,603例)。臨床的および社会的な共変量について、多変量Cox回帰モデルで調整した。生存バイアスを制御するため、インシデントコホートによる感度分析を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・平均5.7年間のフォローアップ中、死亡した患者は2,515例(8.4%)であった。
・最長フォローアップ(7.5年間)の累積死亡率は、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型持効性注射剤(LAI)を使用していた患者で最も低かった。
・SGA LAI使用と比較した調整ハザード比(aHR)は、第1世代抗精神病薬(FGA)LAI 1.37(95%CI:1.01~1.86)、SGA経口剤1.52(95%CI:1.13~2.05)、FGA経口剤1.83(95%CI:1.33~2.50)、抗精神病薬未使用3.39(95%CI:2.53~4.56)であった。
・特定の薬剤における死亡率は、月1回のパリペリドンLAI(aHR:0.11、95%CI:0.03~0.43)、アリピプラゾール経口剤(aHR:0.22、0.15~0.34)、リスペリドンLAI(aHR:0.31、0.23~0.43)の順で低かった。
・ペアワイズ比較では、LAIは同等の経口剤よりも死亡率が33%低かった(aHR:0.67、95%CI:0.56~0.80)。
・インシデントコホートによる結果は、1次分析と一致していた。

 著者らは「統合失調症患者に対するLAI使用は、経口剤と比較し、死亡リスクが約30%低下していた。最も死亡率が低かったのは、SGA LAIおよびアリピプラゾール経口剤であった」としている。

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(鷹野 敦夫)