ワルファリン使用者、がん罹患率が2割低い~130万人のコホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2017/11/17

 

 ノルウェーの50歳以上の大規模コホート研究において、ワルファリンを服用している人はがん罹患率が低いことが報告された。ワルファリンはがんモデルにおいて、AXL受容体チロシンキナーゼによる腫瘍形成を阻害し、抗凝固レベルに達しない用量で抗腫瘍免疫応答を増強するが、本研究で臨床でも抗がん作用を有する可能性が示唆された。著者のノルウェー・ベルゲン大学のGry S. Haaland氏らは「この結果は、抗凝固が必要な患者の薬剤選択に重要な意味を持つだろう」と述べている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2017年11月6日号に掲載。

 この集団ベースのコホート研究は、ノルウェー全国レジストリとノルウェー処方データベース、ノルウェーがんレジストリを組み合わせて行われた。コホートは、2006年1月1日~2012年12月31日にノルウェーに居住していた、1924年1月1日~1954年12月31日に生まれたすべての人々(125万6,725人)から成る。このコホートをワルファリンの使用者と非使用者に分け、ワルファリン使用とがん罹患率の関連を検討した。また、心房細動または心房粗動に対してワルファリンを使用しているサブグループにおいても解析した。データは2004年1月1日~2012年12月31日に収集、2016年10月15日~2017年1月31日に解析した。ワルファリン使用は処方が6ヵ月以上、処方の開始からがんの診断までが2年以上の場合とした。主要アウトカムは、7年の観察期間(2006年1月1日~2012年12月31日)におけるすべてのがんの診断とした。

 主な結果は以下のとおり。

・125万6,725人のうち、男性が60万7,350人(48.3%)、女性が64万9,375人(51.7%)、がん患者が13万2,687人(10.6%)、ワルファリン使用者が9万2,942人(7.4%)、非使用者が116万3,783(92.6%)であった。
・ワルファリン使用者は、平均年齢(SD)が70.2(8.2)歳で非使用者の63.9(8.6)歳より高く、また非使用者では女性が多い(61万3,803 [52.7%])のに比べて、使用者は男性が多かった(5万7,370人 [61.7%])。
・ワルファリン使用者では非使用者と比較して、年齢・性別で調整された罹患率比(IRR)が、がん全体(0.84、95%CI:0.82~0.86)および頻度の高いがん種(肺がん:0.80[95%CI:0.75~0.86]、前立腺がん:0.69 [同:0.65~0.72]、乳がん:0.90 [同:0.82~1.00])で有意に低かった。結腸がんでは有意な効果は認められなかった(0.99、95%CI:0.93~1.06)。
・心房細動または心房粗動患者のサブグループ解析では、がん全体(0.62、95%CI:0.59~0.65)および高頻度にみられるがん(肺がん:0.39 [95%CI:0.33~0.46、乳がん:0.72 [95%CI:0.59~0.87]、結腸がん:0.71 [95%CI:0.63~0.81]で、調整IRRが有意に低かった。

(ケアネット 金沢 浩子)