緑内障手術、線維柱帯切除術 vs.低侵襲ステント留置

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/28

 

 近年、緑内障手術ではステント状のデバイスを埋め込む低侵襲の手術が注目され、海外ではさまざまなデバイスが開発されている。カナダ・トロント大学のMatthew B. Schlenker氏らは、ab interno(眼の内側からの)ゼラチンマイクロステント留置の有効性および安全性について、線維柱帯切除術と比較する国際多施設後ろ向き介入コホート研究を行い、両者の間で失敗のリスクや安全性プロファイルに大きな差はないことを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2017年6月7日号掲載の報告。

 研究グループは、2011年1月1日~2015年7月31日の間に、カナダ・トロント、ドイツ・フランクフルト、オーストリア・ザルツブルグ、ベルギー・ルーヴェンの4つの大学病院において、マイトマイシンC併用ab internoゼラチンマイクロステント留置、またはマイトマイシンC併用線維柱帯切除術を受けた、過去に切開手術の既往歴のないコントロール不良の緑内障患者連続症例354眼293例(マイクロステント185例、線維柱帯切除術169例)について、解析した。

 主要評価項目は、失敗のハザード比(HR:失敗は、2回の連続した測定で眼圧低下<6mmHg、視力障害を伴う、と定義)、またはクリニックでの穿刺を含む介入にもかかわらず、手術後1ヵ月以上の時点で薬物療法を行うことなく眼圧>17mmHg(完全成功)の割合であった。副次評価項目は、眼圧閾値が6~14mmHg、6~21mmHgまたは薬物療法を受けた場合と同じ値(条件付き成功)の割合、介入、合併症、そして再手術率とした。

 主な結果は以下のとおり。

・マイクロステント群で、男性が多く(56% vs.43%)、年齢が若く(平均年齢-3歳)、術前視力が良好で(0.4logMAR以下の割合が22% vs.32%)、線維柱帯形成術の割合が多かった(52% vs.30%)が、ベースラインにおけるそれ以外の患者背景は類似していた。

・マイクロステント失敗の線維柱帯切除術に対する補正HRは、完全成功に関して1.2(95%信頼区間[CI]:0.7~2.0)、条件付き成功に関して1.3(95%CI:0.6~2.8)、その他の評価項目に関しては類似していた。

・25%失敗までの時間は、完全な成功に関してマイクロステントで11.2ヵ月(95%CI:6.9~16.1)、線維柱帯切除術で10.6ヵ月(95%CI:6.8~16.2ヵ月)、条件付き成功に関して、それぞれ30.3ヵ月(95%CI:19.0~未到達)と33.3ヵ月(95%CI:25.7~46.2ヵ月)であった。

・概して、白人には失敗のリスク減少との関連があり(補正HR:0.49、95%CI:0.25~0.96)、糖尿病は失敗のリスク増加と関連していた(補正HR:4.21、95%CI:2.10~8.45)。

・マイクロステントと線維柱帯切除術で、介入がそれぞれ114件および162件、穿刺施行が43%および31%あり、線維柱帯切除術眼の50%はレーザー縫合糸切離を受けた。

・合併症は、それぞれ22件および30件認められたが、ほとんどは一過性であった。

・再手術率は、それぞれ10%および5%であった(p=0.11)。

(ケアネット)