たこつぼ症候群の季節変動~日本のコホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/16

 

 たこつぼ症候群(TTS)の発症における季節的な変動が報告されているが、季節と患者特性の関係や季節による転帰への影響は不明である。東京大学の磯貝 俊明氏らがわが国のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いて検討したところ、TTSの院内死亡率に季節の影響がないようにみえるものの、月間変動がある可能性が示唆された。また、TTS患者における男性の割合、精神疾患・敗血症患者の割合、心室性不整脈発症率に有意な季節変動がみられた。Heart and vessels誌オンライン版2017年6月7日号に掲載。

 著者らは、DPCデータベースにより、2011年1月~2013年12月にTTSで入院した4,306例(平均年齢73.6歳)を後ろ向きに同定した。入院した季節によって患者を4群に分けた(春:3~5月:914例、夏:6~8月:1,243例、秋:9~11月:1,245例、冬:12~2月:904例)。アウトカムは院内死亡および心血管合併症発症とした。複数の傾向スコアで調整したロジスティック回帰分析で、患者の背景とアウトカムを季節間で比較し、アウトカムの調整オッズ比(aOR)と95%信頼区間(CI)を推定した。

 主な結果は以下のとおり。

・季節を通じて年齢には有意な差はなかったが、男性の割合は季節により有意に異なっていた(秋:18.5%、冬:23.9%、p=0.016)。精神疾患の発症率(春:4.9%、夏:7.9%、p=0.025)および敗血症の発症率(冬:0.8%、夏:2.6%、p=0.019)も季節による差が有意であった。

・院内死亡率は、季節による有意な差はなかった(p=0.377、春:5.1%、夏:6.0%、秋:4.6%、冬:6.0%)が、月別にみると9月の3.0%から4月の7.5%まで広範囲にわたっていた。

・心室頻拍/心室細動の発症率は、季節により有意に異なっていた(p = 0.038)。春:2.2%(基準)、夏:3.3%(aOR:1.46、95%CI:0.84~2.51)、秋:2.7%(aOR:1.27、95%CI:0.72~2.22)、 冬:4.4%(aOR:1.92、95%CI:1.11~3.33)。

(ケアネット 金沢 浩子)