緑内障患者の眼圧測定、GAT値の補正は誤差を拡大か

提供元:ケアネット

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公開日:2017/05/24

 

 緑内障の診断と治療においては、眼圧の正確な測定が重要となる。ゴールドマン圧平眼圧計(GAT)による測定では、補正が行われることがあるが、補正式の客観的な臨床評価はなされていない。スイス・チューリッヒ大学のJosephine Wachtl氏らは、前向きケースシリーズ研究を行い、角膜が薄く緑内障が進行している眼ではPascal dynamic contour tonometry(DCT)による測定値とGAT値の差が大きいことを明らかにした。補正式を用いてGAT値を補正することは、予測不可能な測定誤差をさらに拡大する危険性があることから、著者らは、「とくに角膜厚が薄い眼では、GAT値を当てにしないほうがいい。いかなる補正もやめるべきである」と警告を発している。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年5月11日号掲載の報告。

 研究グループは、GAT値、補正GAT値およびDCT値間の差、ならびにその差と緑内障のステージとの関連について調査する目的で、前向き横断研究を行った。
 対象は、2011年7月1日~2016年5月31日の間に、チューリッヒ大学病院眼科とTalacker Eye Centerを受診した白人の緑内障患者112例である。GATおよびDCTにて順序は無作為で眼圧を測定し、GAT値は5つの補正式で補正した。
 主要評価項目は、未補正または補正GAT値とDCT値の差、副次評価項目は、眼圧測定値の差と緑内障重症度スコア(Glaucoma Severity Score)で評価される緑内障のステージとの関連とした。

 主な結果は以下のとおり。

・112例の患者背景は、女性67例、男性45例、平均年齢66.3(SD 13.1)歳、左眼63眼(56.3%)、85例(75.9%)は眼圧降下薬使用中であった。
・眼圧(平均±SD)は、DCTで20.3±4.5mmHg(95%信頼区間[CI]:19.4~21.1)、GATで17.0±4.1mmHg(95%CI:16.3~17.8)であった。
・DCT値とGAT値の差(IOP DCT-IOP GAT、平均±SD)は、3.3±2.0mmHg (95%CI:2.9~3.6)であった。
・DCT値と5つの補正GAT値との差(IOP DCT-IOP 補正GAT)は、2.7~5.4mmHgの範囲であった。
・Dresdner補正式を用いた補正GAT値(17.6±4.1mmHg)が、DCT値との差が最も小さかった。
・緑内障重症度スコア(平均±SD)は、4.7±3.4(95%CI:4.1~5.4)であった。
・DCT値とGAT値の差(IOP DCT-IOP GAT)は、緑内障重症度スコアと正の相関(rs=0.33、p<0.001)を、中心角膜厚と負の相関(rs=-0.22、p=0.02)を示した。

(ケアネット)