糖尿病患者支援に地域版新資格制度発足

提供元:ケアネット

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公開日:2017/04/06

 

 2017年3月29日、都内において東京糖尿病療養指導士認定機構設立準備委員会は、今夏より発足する「東京糖尿病療養指導士(東京CDE)」「東京糖尿病療養支援士(東京CDS)」に関するプレスセミナーを開催した。
 糖尿病療養指導士(CDE)とは、糖尿病とその療養指導全般に関する正しい知識を持ち、医師の指示の下、患者に療養指導を行うことができる熟練した経験を持ち、試験に合格した一定の医療スタッフ(看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士)のことで、患者の生活指導のエキスパートである(平成28年6月時点で全国に19,062名)。今回の資格制度発足は、東京地域に特化した新しい認定資格制度となる。

 はじめに東京糖尿病療養指導推進機構の代表理事である本田 正志氏(西川クリニック)が、「糖尿病の臨床現場では、合併症など病状が進行してから受診する患者もいる。そのため患者が重症化する前に身近な人に相談できる、支援できて発症予防に役立つ組織があればと考え、今回資格制度発足となった。今後、糖尿病患者(予備群も含め)2,000万人のために組織を発展させ、糖尿病の重症化を予防できるように支援をお願いしたい」とあいさつを行った。

医療スタッフのスキルアップが糖尿病診療体制を強化する
 次に東京糖尿病療養指導士認定機構の代表幹事である菅原 正弘氏(菅原医院 院長)が、「東京における糖尿病患者の増加と治療の実態」と題して基調講演を行った。
 講演では、東京都の糖尿病患者の動向について全国と比較し、男女ともに糖尿病患者が全国平均より増えていることを指摘した。また、糖尿病の合併症について触れ、以前から知られている網膜症や腎症などに加え、最近では、歯周病、がん、認知症などが糖尿病関連とも報告されている。なかでも介護原因となる疾患の脳卒中(1位)、認知症(2位)が糖尿病に絡む疾患であることから、「介護者にも糖尿病の知識が必要な時代が来た」と警鐘を鳴らす。
 糖尿病合併症の数が増えると、その医療費も増える。たとえば腎症を発症し透析まで進展した場合、1人年間500万円以上の医療費が必要なことを考えると、医療経済の面からも早期受診、診療介入によるサポートが必要となる。そのためにも、医療スタッフ、とくにクリニックなどのスタッフのスキルアップが望まれ、「こうした新資格制度の活用で層の厚い診療体制が構築されることを希望する」と抱負を語った。

52万人の専門職が糖尿病の発症、重症化を防ぐ
 続いて同機構の事務局長である内潟 安子氏(東京女子医科大学 糖尿病センター長)が、「東京糖尿病療養指導士とは」と題し、その発足の意義と活動、今後の展望について説明した。
 全国版である日本糖尿病療養指導士(CDEJ)は、臨床現場でよく認知されているが、今回の資格は、全国的にみて患者数が多い東京地域に特化し、地域の事情や問題を加味し、自己管理を指導する医療スタッフを育成するものであるという。
 具体的に「東京CDE」は、医療専門職として主に糖尿病患者の指導にあたるスタッフで、CDEJの職種に加え保健師、准看護師、健康運動指導士、作業療法士などを対象に資格の取得を目指すとする。
 また、「東京CDS」は幅広い職種から成り、主に健康増進・糖尿病発症予防や福祉、介護など、患者よりも予備群、一般生活者を対象に疾患啓発、予防にあたるスタッフである。対象は、栄養士、介護支援専門員、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士、歯科衛生士、登録販売者、保健・健康増進担当の自治体職員などが想定されている。両方の有資格者は東京都だけで約52万人以上と予想されている。
 資格取得者は、糖尿病の病態と療養に関する体系的な知識を、職域で専門的に活かせ、医師やCDEJなどの指導対象者にとっては信頼して患者指導を任すことができる。また、資格者が施設にいることで、クリニックならばスタッフの再教育、継続教育につながるほか、健保組合なら糖尿病発症予防、重症化予防に最新の疾患知識を指導に役立てることができるという。
 内潟氏は説明の中で、「臨床現場では、患者は医師に直接聞けないことを周りの看護師などのスタッフに尋ねている。そのときに答えられないと、患者の信頼を得ることはできない。糖尿病診療では、日ごろのコミュニケーションが大事であり、スタッフがこの資格を通じてスキルアップすることで、患者への適切な指導ができるようになってもらいたい」と新資格の意義を強調した。
 今後の予定として8、9月に受験者用研修会の実施、10月に認定試験が開催され、2018年初頭には第1号の資格者が誕生する(資格更新は5年ごとの予定)。
 両資格に関する詳しい内容は、下記のサイトを参考にしていただきたい。

関連サイト

東京糖尿病療養指導士認定機構
東京糖尿病療養指導推進機構

(ケアネット 稲川 進)