高度アルツハイマー病へのドネペジル投与は続けたほうがよいのか 提供元:ケアネット ツイート 公開日:2015/12/16 地域で暮らす中等度~高度のアルツハイマー病患者に対するドネペジル投与の中止は、当初1年間は介護施設入居リスクを増大するが、その後の3年間はドネペジル継続群と差はないことが示された。英国・ロンドン大学のRobert Howard氏らが、ドネペジルとメマンチンの投与について検討した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「DOMINO-AD」の結果から報告した。複数の先行観察研究で、認知症の薬物治療に伴い介護施設入居時期が遅くなることが示唆されているが、軽度~中等度のアルツハイマー病患者を対象とした先行無作為化試験では、影響がないとする結果が示されていた。今回の結果を踏まえて著者らは、「継続の有益性が明白ではないとしても、ドネペジル治療の中止か継続かの決定は、中止による潜在的リスクを知らせたうえで行うべきである」と述べている。Lancet Neurology誌2015年12月号の掲載報告。 DOMINO-AD試験は、イングランドとスコットランドにある15の2次医療施設から被験者を募って行われた。対象は、地域で暮らす中等度~高度のアルツハイマー病患者で、ドネペジル10mgを3ヵ月以上継続処方され、直近6週間以上継続しており、標準化されたMini-Mental State Examination(MMSE)スコア5~13点であった。研究グループは被験者を、(1)ドネペジル(10mg/日)継続/メマンチンなし(継続群)、(2)ドネペジル中止/メマンチンなし(中止群)、(3)ドネペジル中止/メマンチン20mg/日開始(切り替え中止群)、(4)ドネペジル(10mg/日)継続/メマンチン(20mg/日)開始(併用継続群)のいずれかに無作為に割り付け、52週間治療を行った。52週以降の治療法の選択は、被験者および担当医師に任された。試験開始後52週間、居住地の記録を取り、その後3年間は26週間ごとに記録した。本検討では、本試験で副次アウトカムであった介護施設(nursing home)への入居(独居生活から住居型ケア施設への不可逆的な移動)について評価した。また、二重盲検期完了後1年間のフォローアップ期間における入居リスクについて、事後解析で評価した。 主な結果は以下のとおり。 ・2008年2月11日~10年3月5日に、継続群73例(25%)、中止群73例(25%)、切り替え群76例(26%)、併用群73例(25%)に無作為に割り付けられた。 ・無作為後4年間に162例(55%)が介護施設へ入居した。 ・各群における入居者数は同程度であった。継続群36例(49%)、中止群42例(58%)、切り替え群41例(54%)、併用群43例(59%)。 ・試験開始当初1年間、統合ドネペジル中止群の介護施設入居が、統合ドネペジル継続群と比べて有意に多かった(ハザード比:2.09、95%信頼区間[CI]:1.29~3.39)。しかし、その後の3年間で差はなくなり(同:0.89、0.58~1.35)、治療効果の経時的な不均一性が有意であることが判明した(p=0.010)。 ・メマンチン開始群と非開始群との比較では、1年目(同:0.92、0.58~1.45)あるいはその後3年間(同1.23、0.81~1.87)ともに、患者への影響は認められなかった。 関連医療ニュース 抗認知症薬は何ヵ月効果が持続するか:国内長期大規模研究 ドネペジル+メマンチン、アルツハイマー病への効果はどの程度? 抗認知症薬4剤のメタ解析結果:AChE阻害薬は、重症認知症に対し有用か? 担当者へのご意見箱はこちら (ケアネット) 原著論文はこちら Howard R, et al. Lancet Neurol. 2015;14:1171-1181. 掲載内容はケアネットの見解を述べるものではございません。(すべての写真・図表等の無断転載を禁じます。) このページを印刷する ツイート [ 最新ニュース ] 多枝病変のSTEMI、FFRガイド下完全血行再建か責任病変のみPCIか/NEJM(2024/04/19) ALK陽性非小細胞肺がんの術後補助療法、アレクチニブvs.化学療法/NEJM(2024/04/19) 慢性腎臓病の入院抑制を意図した電子記録+診療推進者介入の効果は証明されず(解説:浦信行氏)(2024/04/19) CPRはいつまで続けるべきか? In-Hospital CPA レジストリからの報告(解説:香坂俊氏)(2024/04/19) 進行肺がん、初診から治療までの待機期間が治療効果に影響/日本呼吸器学会(2024/04/19) 大腸がん患者の死亡リスクが高くなる超加工食品は?(2024/04/19) カルシウムとビタミンDの摂取は閉経後女性の全死亡リスクに影響せず(2024/04/19) 親を見れば自分の肥満リスクが分かる(2024/04/19) 特殊なMRIが治療抵抗性統合失調症の予測に有用か(2024/04/19) 日本における抗CGRP抗体の使用状況~日本頭痛学会会員オンライン調査(2024/04/19) [ あわせて読みたい ] 薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30) 全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31) ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15) 診療よろず相談TV シーズンII(2014/07/03) 診療よろず相談TV(2013/10/25) 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)