統合失調症治療、ドパミンD3の可能性は

提供元:ケアネット

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公開日:2014/10/01

 

 ドパミンD3受容体は、統合失調症の治療ターゲットとして有望であり、同受容体と既存の抗精神病薬の結び付きについて知識を改めることは、新薬およびより選択的な治療薬の開発において重要となる。ブラジルのリオグランデ・ド・スル国立大学のGeancarlo Zanatta氏らは、抗精神病薬ハロペリドールと、ヒトのドパミンD3受容体との結合について、改良版量子力学/分子力学(QM/MM)計算法を用いた検討を行った。本報告は、新たな統合失調症の治療薬発見にインパクトをもたらすQM/MM法という、コンピュータ量子生化学的なデザイン手法を用いた第一段階の検討であった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2014年9月18日号の掲載報告。

 研究グループは、古典的抗精神病薬であるハロペリドールとの結び付きを、D3受容体アンタゴニストのエチクロプリドのX線分析データを予測テンプレートとして用いたドッキングエッセイにより検討した。その後、古典的計算法およびQM/MM法を用いた評価にて、結合予測の質を改善。シミュレーションのQM部分は、密度汎関数理論(DFT)を用いることで完遂させた。

 主な所見は以下のとおり。

・ドッキング後、算出されたQM改善の総相互作用エネルギーはEQMDI=-170.1kcal/molで、古典的量子力学での改善(ECLDI=-156.3kcal/mol)、粗ドッキング法(ECRDI=-137.6kcal/mol)よりも大きかった。
・QM/MM計算法は、D3受容体とハロペリドールの結合においてAsp110アミノ酸残基が重要な役割を果たすことを明らかにした。次いで、Tyr365、Phe345、Ile183、Phe346、Tyr373、Cys114が明らかになった。
・そのうえで、ハロペリドール・ヒドロキシル基の関連が強調され、それらは、Tyr365とThr369の残基と相互に作用し、ドパミン受容体との結び付きを強化することが示された。
・最後に、4-clorophenylと4-hydroxypiperidin-1-yl fragments(OHまたはCOOHによりC3HおよびC12Hのhydrogen replacementのような)が、明らかなドパミン拮抗作用プロファイルを有するハロペリドール誘導体と結び付く可能性があることが示唆された。

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(ケアネット)