【日本癌治療学会2012】腎がん治療の過去と未来

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【日本癌治療学会2012】腎がん治療の過去と未来のイメージ

 第50回日本癌治療学会学術集会(2012年10月25日~27日)のシンポジウム「泌尿器がん治療の過去と未来」にて、金山博臣氏(徳島大学大学院HBS研究部泌尿器科学)は、「腎がん:サイトカイン、分子標的治療など」と題して、腎がんのサイトカイン療法および分子標的治療の歴史と現在の標準治療、今後の展望について講演を行った。



●サイトカイン療法の時代

 日本では2008年に腎がんに対して最初の分子標的治療薬であるソラフェニブが承認されるまで、腎がんの治療はインターフェロンα(IFNα)または低用量インターロイキン2(IL-2)、あるいは両剤の併用療法によるサイトカイン療法が中心であった。

 肺転移を有する淡明細胞がんを対象としたIL-2とIFNα併用療法の多施設共同研究(Akaza H, et al. Jpn J Clin Oncol. 2010; 40: 684-689)によると、全症例での奏効率は35.7%、NC以上は73.8%と腫瘍縮小効果が高く、6ヵ月時点での無増悪生存率は60%以上であり、奏効した症例ではその効果が長く持続することが示された。

 また、1,463例を対象としてサイトカイン療法の予後を検討した日本の40施設の共同研究(Naito S, et al. Eur Urol. 2010; 57: 317-325)の成績によると、生存期間中央値21.4ヵ月、5年生存率22.5%であり、poor riskの患者群でも生存期間中央値9.8ヵ月という良好な成績が得られている。

 金山氏は、これらの分子標的治療が登場する以前の日本の腎細胞がんのエビデンスをまとめ、IFNαや低用量IL-2、あるいはその併用療法によるサイトカイン療法は、肺転移を伴う淡明細胞がんに対して有効であり、転移巣の切除や腎摘除術が予後の改善に寄与したと述べた。その他の治療(ミニ移植、ペプチドワクチン療法、樹状細胞療法)ではサイトカイン以上の有効性を示すエビデンスは得られなかった。

●分子標的療法の時代

 日本では現在、VEGFR-チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)としてソラフェニブ、スニチニブ、およびアキシチニブ、mTOR阻害薬としてエベロリムスとテムシロリムスの5剤が承認されている。金山氏は、それらの薬剤の主要なエビデンスをレビューした。

 転移性の淡明細胞がんの患者750例を対象とし、ファーストライン治療においてスニチニブとIFNαを比較した第III相試験(Motzer RJ, et al. N Engl J Med. 2007; 356: 115-124)の結果から、スニチニブはIFNαに比べ無増悪生存期間(PFS)を有意に延長させ(ハザード比0.42、95%CI:0.32~0.54、p<0.001)、奏効率もスニチニブ群で有意に高い(Central reviewにて、31% vs. 6%、p<0.001)ことが示された。Grade 3/4の倦怠感の発現率はIFNα群で高く、下痢はスニチニブ群で多かったが、QOLの評価はスニチニブ群で有意に良好であった。

 N Engl J Med誌の同じ号には、サイトカイン療法に抵抗性を示す進行淡明細胞がん患者903例を対象として、ソラフェニブとプラセボを比較した第III相試験(Escudier B, et al. N Engl J Med. 2007; 356: 125-134)の結果が掲載された。それによると、PFS中央値はソラフェニブ群5.5ヵ月に対しプラセボ群2.8ヵ月(ハザード比0.44、95%CI:0.35~0.55、p<0.01)であった。2005年5月の解析時の全生存期間(OS)でも延長が認められたが(ハザード比0.72、95%CI:0.54~0.94、p=0.02)、統計学的に有意ではなかった。主なソラフェニブによる有害事象は、下痢、発疹、倦怠感、手足症候群であった。

 Poor riskの淡明細胞がん患者626例を対象に、ファーストライン治療においてmTOR阻害薬のテムシロリムス、IFNαの単剤、および両剤の併用療法を比較した第III相試験(Hudes G, et al. N Engl J Med. 2007; 356: 2271-2281)の結果によると、テムシロリムス群はIFNα群に比べて、OS(ハザード比0.73、95%CI:0.58~0.92、p=0.008)、およびPFSともに有意な延長が認められた。一方で、併用療法群はIFNα群に比べて有意なOSの延長は示されなかった。IFNα群、テムシロリムス群、併用群の生存期間中央値はそれぞれ7.3ヵ月、10.9ヵ月、および8.4ヵ月であった。テムシロリムス群の有害事象として、発疹、末梢浮腫、高血糖、高脂血症が多く出現したが、重篤な有害事象の発症頻度はIFNα群に比べて低かった。

 転移性腎細胞がん患者649例を対象として、ファーストライン治療で抗VEGF抗体のベバシズマブ+IFNαの併用療法とIFNαを比較した第III相試験(Escudier B, et al. Lancet. 2007; 370: 2103-2111)によると、併用群で有意なPFS中央値の延長が認められた(10.2ヵ月 vs. 5.4ヵ月、ハザード比 0.63、95%CI:0.52~0.75、p=0.0001)。併用群で多く認められたGrade 3以上の有害事象は倦怠感と無力症であった。

 また、スニチニブやソラフェニブによる治療後に増悪した転移性腎細胞がん患者410例を対象に、エベロリムスとプラセボを比較した第III相試験(Motzer RJ, et al. Lancet. 2008; 372: 449-456)では、エベロリムス群で有意なPFSの延長が示された(4.0ヵ月 vs. 1.9ヵ月、ハザード比0.3、95%CI:0.22~0.40、 p<0.0001)。

 さらに、スニチニブやベバシズマブ、IFNαなどのサイトカイン療法によるファーストライン治療後に増悪した723例の患者を対象に、アキシチニブとソラフェニブを比較した多施設国際共同試験が行われた(Rini BI, et al. Lancet. 2011; 378: 1931-1939)。その結果、アキシチニブがPFSを有意に延長することが示された(6.7ヵ月 vs. 4.7ヵ月、ハザード比0.665、95%CI:0.544~0.812、p<0.0001)。

 以上のエビデンスに基づいて、2012年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)より腎細胞がんの治療アルゴリズムが提唱された。それによると、ファーストライン治療ではGoodおよびIntermediate riskの患者にはスニチニブ、パゾパニブ、ベバシズマブ+IFNα併用療法が、Poor riskではテムシロリムスがLevel 1エビデンスであり、セカンドライン治療では、サイトカイン療法で増悪後はソラフェニブ、アキシチニブ、パゾパニブが、VEGFR-TKIによる治療で増悪した場合は、アキシチニブまたはエベロリムスがLevel 1エビデンスの治療として推奨されている(わが国では、ベバシズマブとパゾパニブは腎細胞がんに対して未承認)。mTOR阻害薬で増悪後のセカンドライン治療やサードライン治療に関するエビデンスはまだない。

 金山氏は、今後の腎細胞がん治療の課題として、分子標的治療とサイトカイン治療も含めて、これら薬剤による最も有効な逐次治療の順序を探ること、分子標的治療に対する耐性克服を挙げた。

 VEGFR-TKIの耐性メカニズムとして、最近では、血管新生や増殖因子に関わるシグナル経路が亢進していることが示唆され、VEGFR/FGFR-TKIのdovitinibやVEGFR/MET-TKIのcabozantinib、抗アンジオポエチン抗体のCVX-060が臨床試験で検討中であり、それらの結果が期待される。一方、分子標的薬であり、免疫療法として作用する抗PD-1抗体の有効性についても期待が持たれる。

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(ケアネット)

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