MI後標準治療下でのhsCRP高値例、IL-1β抗体で心不全入院減少の可能性:CANTOS探索的解析/AHA

提供元:ケアネット/臨床研究適正評価教育機構

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公開日:2018/11/19

 

 慢性心不全例における、炎症性サイトカインの増加を報告する研究は少なくない。しかし、心不全例に対する抗炎症療法の有用性を検討したランダム化試験“ATTACH”と“RENEWAL”は、いずれも有用性を示せずに終わった。そこで、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らが、心筋梗塞(MI)後、非心不全例を含む高hsCRP例への抗炎症療法の心不全入院作用を検討すべく、ランダム化試験“CANTOS”の探索的解析(事前設定解析)を行った。その結果 、インターロイキン(IL)-1β抗体による用量依存性の心不全入院減少の可能性が示唆された。11月11日、米国・シカゴで開催された米国心臓協会(AHA)学術集会のRapid Fireセッションにおいて報告された。

MI後標準治療下でhsCRP高値例が対象
 CANTOS試験の対象となったのは、MI後、スタチンを含む積極的2次予防療法にもかかわらず、hsCRPが「≧2mg/L」だった1万61例である。平均年齢は61歳、約8割がレニン・アンジオテンシン系抑制薬を服用しており、およそ2割はすでに慢性心不全と診断されていた。

 これら1万61例は、IL-1β抗体であるカナキヌマブ(50mg、150mg、300mg皮下注/3ヵ月)群とプラセボ群にランダム化され、二重盲検法で追跡された。

hsCRP著明低下例では心不全入院リスク有意低下
 3.7年間(中央値)の追跡期間中、385例(3.8%)が心不全で入院した。うち、約60%は試験開始時に心不全を認めた例だった。

 プラセボ群と比較したカナキヌマブ群の「心不全入院」ハザード比[HR]は、50mgで1.04(95%信頼区間[CI]:0.79~1.36)、150mg群で0.86
(95%CI:0.65~1.13)、300mgで0.76(95%CI:0.57~1.01)となり、有意な用量依存性の減少傾向を認めた(傾向のp=0.025)。「心不全死・心不全入院」で比較しても、同様の用量依存性が認められた(傾向のp=0.042)。

 さらにカナキヌマブ群を全用量併合すると、「到達hsCRP<2mg/L」例では、プラセボに比べ心不全入院リスクの有意な低下が観察された(HR:0.80、95%CI:0.70~0.91)。「hsCRP50%以上低下」例でも同様だった(HR:0.86、95%CI:0.77~0.97)。

 本試験はNovartisの資金提供を受けて行われた。また発表と同時に、Circulation誌オンライン版で公開された。

(医学レポーター/J-CLEAR会員 宇津 貴史(Takashi Utsu))

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