集団認知行動療法が腰痛の治療に有用

提供元:ケアネット

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公開日:2010/03/25

 



集団認知行動療法が、プライマリ・ケアにおける腰痛治療として有用なことが、イギリスWarwick大学医学部のSarah E Lamb氏らによる無作為化試験で示された。国際的なガイドラインでは、非特異的な腰痛が持続する場合は積極的に身体を動かすことが推奨されている。プライマリ・ケアでは、通常の治療よりも看護師による積極的な運動の指導の方が効果は高いが長期には持続せず、理学療法(体系的運動療法、鍼灸、マニピュレーション、姿勢指導)の長期効果もわずかなことが示されている。認知行動療法の長期効果については相反する結果が混在しているが、集団で行う場合は同じ問題を持つ患者同士の相互作用による改善効果やコストの軽減が期待できるという。Lancet誌2010年3月13日号(オンライン版2010年2月26日号)掲載の報告。

集団認知行動療法の有無で無作為割り付け




研究グループは、プライマリ・ケアにおいて腰痛患者へのアドバイスに加え集団認知行動療法を行うアプローチの効果を評価するために、多施設共同無作為化試験を実施し、費用効果分析も行った。

イングランドの56の一般診療(GP)施設から亜急性あるいは慢性の成人腰痛患者701例が登録され、積極的な疾患管理の指導を受けた。これらの患者が、最大6セッションの集団認知行動療法を受ける群(468例)あるいはそれ以上の介入は受けない対照群(233例)に無作為に割り付けられた。

主要評価項目は、12ヵ月の時点におけるRoland Morris機能障害質問票および改訂Von Korff障害スコアのベースラインからの変化とした。評価は盲検下に行い、フォローアップデータが得られた全患者についてintention-to-treat解析を行った。

有意な改善効果、医療コストの増加も少ない




集団認知行動療法群の399例(85%)および対照群の199例(85%)で有効性の解析が可能であった。最も多い治療中止の理由は質問票への回答拒否であった。

治療開始後12ヵ月の時点におけるRoland Morris機能障害質問票スコアのベースラインからの変化は、集団認知行動療法群が2.4と、対照群の1.1に比べ有意に優れていた(群間差:1.3、p=0.0008)。

改訂Von Korff障害スコアのベースラインからの変化は、集団認知行動療法群が13.8%と、対照群の5.4%に比べ有意に優れていた(群間差:8.4%、p<0.0001)。改訂Von Korff障害スコアの疼痛スコアも、それぞれ13.4%、6.4%と、集団認知行動療法群が有意に優れた(群間差:7.0%、p<0.0001)。

集団認知行動療法による質調整生存年(QALY)の増分は0.099であった。1QALY当たりのコストの増加は1,786ポンドであり、1QALY当たり3,000ポンドを閾値とした場合の費用効果の確率は90%以上に達した。

両群とも、重篤な有害事象は認めなかった。

著者は、「亜急性あるいは慢性の腰痛に対し、集団認知行動療法は有効であり、その効果は1年間持続し、医療コストも安価であった」と結論し、「本試験には都市部、地方部、富裕層居住区、貧困層居住区の患者が含まれる。また、年齢の上限を設けなかったため平均年齢が他の試験より高く、人種の割合もイギリスの現状を反映するものだ。したがって、得られた結果は広く適用可能と考えられる」としている。

(菅野守:医学ライター)