神経内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ

コロナよりもインフルエンザの方が脳への影響が大きい

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)よりもインフルエンザの方が、神経疾患により病院で治療を受ける可能性の高いことが、COVID-19またはインフルエンザにより入院した患者を追跡した新たな研究で明らかになった。米ミシガン大学アナーバー校のBrian Callaghan氏らによるこの研究結果は、「Neurology」に3月20日掲載された。Callaghan氏は、「われわれが予測していた通りの結果ではなかったが、COVID-19で入院しても、インフルエンザで入院した場合と比べて、一般的な神経疾患に対する治療が増えるわけではないことが分かった点では心強い結果だった」と同大学のニュースリリースの中で述べている。

認知症患者と介護者にとって重要なのは社会的なつながり

 認知症患者とその介護者が健康を保つためには活発な社会生活が必要であるが、認知症患者もその介護者も、患者の認知症が進行するにつれて社会的なつながりが失われていくことが、新たな研究で明らかにされた。米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)医学部のAshwin Kotwal氏らによるこの研究の詳細は、「The Gerontologist」4月号に掲載された。  Kotwal氏は、「社会的なアンメットニーズは生活の質(QOL)に悪影響を及ぼし、うつ病や心血管疾患などの健康問題を引き起こし、医療費の増加や早期死亡につながる可能性がある」と述べる。そして、「先行研究では、社会的孤立度が高い高齢者は、介護施設に入所するオッズが2倍以上になることが示されている」と説明している。

レビー小体型認知症、受診診療科により治療ニーズが異なる

 大阪大学の池田 学氏らは、レビー小体型認知症(DLB)患者とその介護者の治療ニーズおよびその治療ニーズに対する主治医の認識が、患者が受診している診療科により異なるかを調査した。Alzheimer's Research & Therapy誌2024年3月14日号の報告。  多施設共同横断的観察調査研究のサブ解析を実施した。患者が受診している診療科に応じて、精神科群、老年内科群、神経内科群に分類した。患者と介護者の治療ニーズを「最も苦痛を感じている症状」と定義し、それぞれの回答頻度をまとめた。

健康的な食事による生物学的な老化の遅れが認知症予防に

 科学者たちはこれまで、健康的な食生活を送っている人には年を取っても脳の健康を維持している人が多いことは知っていたが、その理由は不明だった。このほど、その答えとなり得る研究結果が発表された。この研究によると、健康的な食事は生物学的な老化を遅らせ、それが脳機能の保護に役立っている可能性があるという。論文の筆頭著者である、米コロンビア大学アルツハイマー病・加齢脳タウブ研究所のAline Thomas氏は、「われわれの研究では、より緩徐な老化速度が、健康的な食事と認知症リスク低下との関係の一部を媒介していることが示唆された」と述べている。この研究の詳細は、「Annals of Neurology」に2月26日掲載された。  Thomas氏らは今回、健康的な食事は生物学的な老化を遅らせ、それにより認知症の発症リスクが低下するという仮説を立て、フラミンガム心臓研究のデータを用いてこの仮説を検討した。フラミンガム心臓研究は、3世代のコホートを対象に1948年に開始された継続中の研究である。今回の研究では、1971年に開始された第二世代コホートから、60歳以上で認知症がなく、食事、エピジェネティクス、および追跡データのそろう1,644人(平均年齢69.6歳、女性54%)が対象とされた。これらの対象者は、4〜7年おきに9回の追跡調査を受けており、調査ごとに身体診察を受け、ライフスタイルに関連した質問票へ回答するとともに、血液採取と、1991年以降は神経認知テストも受けていた。5回目(1991〜1995年)から8回目(2005〜2008年)の調査時の食事内容から、MIND(マインド)食の遵守状況の指標となるMIND食スコアが算出された。

日本における抗CGRP抗体の使用状況~日本頭痛学会会員オンライン調査

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体は、片頭痛治療の選択肢を大きく変えた。しかし、日本ではCGRP関連新規片頭痛治療薬ガイドライン(1ヵ月当たりの片頭痛日数[MMD]が4日以上および予防的治療の失敗が1回以上)はよく知られているものの、抗CGRP抗体のリアルワールドでの使用および関連する頭痛ケアの状況については、よくわかっていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、日本における抗CGRP抗体の使用経験および使用の意思決定について、調査を行った。The Journal of Headache and Pain誌2024年3月15日号の報告。

早期パーキンソン病へのGLP-1受容体作動薬、進行抑制効果を確認/NEJM

 診断後3年未満のパーキンソン病患者を対象とした糖尿病治療薬のGLP-1受容体作動薬リキシセナチド療法について、第II相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験で、プラセボと比較して12ヵ月時点での運動障害の進行を抑制したことが示された。ただし、消化器系の副作用を伴った。フランス・トゥールーズ大学病院のWassilios G. Meissner氏らLIXIPARK Study Groupによる検討結果で、NEJM誌2024年4月4日号で発表された。リキシセナチドは、パーキンソン病のマウスモデルで神経保護特性を示すことが報告されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「より長期かつ大規模な試験により、パーキンソン病患者に対するリキシセナチドの有効性および安全性を確認することが必要である」とまとめている。

認知機能低下の高齢者における活動時の疼痛の特徴

 神戸学院大学の中田 健太氏らは、アビー痛みスケール(APS)を用いて、認知機能が低下している高齢者の運動および活動に伴う疼痛を評価し、活動時の疼痛を効果的に反映するサブ項目を特定しようと試みた。Journal of Pain Research誌2024年3月5日号の報告。  富山県・池田リハビリテーション病院の筋骨格系疾患および認知機能低下を有する高齢患者225例を対象に横断的研究を実施した。歩行中または移動中の疼痛の評価には、言語式評価スケール(VRS)およびAPSを用いた。疼痛の有無や程度を最も正確に反映するAPSサブ項目を特定するため項目反応理論(IRT)を用いた。

レビー小体型認知症に対するドネペジルの有用性~国内第IV相試験

 ドネペジルは日本において、レビー小体型認知症(DLB)に対する治療薬として承認された。大阪大学の森 悦朗氏らは、DLBに対するドネペジルの有効性を評価するため、12週間の二重盲検期間における全体的な臨床症状に焦点を当てた第IV相試験の結果を報告した。Psychogeriatrics誌オンライン版2024年3月4日号の報告。  DLBが疑われる患者をプラセボ群(79例)またはドネペジル10mg群(81例)にランダムに割り付けた。主要エンドポイントは、臨床面接による認知症変化印象尺度-介護者入力(Clinician's Interview-Based Impression of Change plus Caregiver Input:CIBIC-plus)を用いて評価した全体的な臨床症状の変化とした。また、CIBIC-plusの4つの領域(全身状態、認知機能、行動、日常生活活動)およびミニメンタルステート検査(MMSE)、Neuropsychiatric Inventory(NPI)で測定した認知機能障害と行動および精神神経症状の変化も評価した。

早期アルツハイマー病に対するレカネマブの費用対効果

 2023年1月、米国FDAより軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病による軽度認知症に対する治療薬としてモノクローナル抗体レカネマブが承認された。しかし、認知症に対するレカネマブの費用対効果は、不明なままである。カナダ・Memorial University of NewfoundlandのHai V. Nguyen氏らは、レカネマブの費用対効果およびアルツハイマー病の検査制度とAPOE ε4の状況によりどのように変化するかを定量化するため、本研究を実施した。Neurology誌2024年4月9日号の報告。  検査アプローチ(PET、CSF、血漿アッセイ)、治療法の選択(標準的治療、レカネマブ併用)、ターゲティング戦略(APOE ε4非キャリアまたはヘテロ接合性患者を特定するか否か)の組み合わせにより定義した7つの診断治療戦略について比較した。有効性は、クオリティ調整された生存年数により測定し、第3者および社会の観点から生涯期間にわたるコスト(2022年米国ドル)を推定した。次の5つの状態でhybrid decision tree-Markov cohort modelを構成した。(1)MCI(臨床的認知症重症度判定尺度[Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB]スコア:0~4.5)、(2)軽度認知症(CDR-SBスコア:4.6~9.5)、(3)中等度認知症(CDR-SBスコア:9.6~16)、(4)高度認知症(CDR-SBスコア:16超)(5)死亡

認知機能の低下抑制、マルチビタミンvs.カカオ抽出物

 市販のマルチビタミン・ミネラルサプリメント(商品名:Centrum Silver、以下「マルチビタミン」)の連日摂取が高齢者の認知機能に与える影響を詳細に調査したCOSMOS-Clinic試験の結果、マルチビタミンを摂取した群では、プラセボとしてカカオ抽出物(フラバノール500mg/日)を摂取した群よりも2年後のエピソード記憶が有意に良好で、サブスタディのメタ解析でも全体的な認知機能とエピソード記憶が有意に良好であったことを、米国・Massachusetts General HospitalのChirag M. Vyas氏らが明らかにした。The American Journal of Clinical Nutrition誌2024年3月号掲載の報告。