腎臓内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

CKD治療、ダパグリフロジンにzibotentan併用の有用性/Lancet

 現行の推奨治療を受けている慢性腎臓病(CKD)患者において、エンドセリンA受容体拮抗薬(ERA)zibotentanとSGLT2阻害薬ダパグリフロジンの併用治療は、許容可能な忍容性と安全性プロファイルを示し、アルブミン尿を減少させ、CKDの進行を抑制する選択肢となることが示された。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らが「ZENITH-CKD試験」の結果を報告した。先行研究で、SGLT2阻害薬およびERAは、CKD患者においてアルブミン尿を減少させ、糸球体濾過量(GFR)低下を抑制することが報告されていた。今回、研究グループはzibotentan+ダパグリフロジンの有効性と安全性を評価した。Lancet誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

巣状分節性糸球体硬化症のeGFR変化、sparsentan vs.イルベサルタン/NEJM

 巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)患者において、エンドセリン受容体・アンジオテンシン受容体デュアル拮抗薬のsparsentanは、イルベサルタンと比較し尿蛋白の減少が大きかったにもかかわらず、108週時の推算糸球体濾過量(eGFR)スロープ(eGFR変化率の年率換算)に有意差は認められなかった。米国・ミネソタ大学のMichelle N. Rheault氏らが、多施設共同無作為化二重盲検第III相試験「DUPLEX試験」の結果を報告した。FSGSの治療にはアンメットニーズが存在する。sparsentanは、8週間の第II相試験ではFSGS患者の尿蛋白を減少させたが、FSGSに対する長期投与の有効性と安全性は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2023年11月3日号掲載の報告。

肝臓と腎臓の慢性疾患の併存で心臓病リスクが上昇する

 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(IHD)のリスク抑制には、肝臓と腎臓の病気の予防が肝腎であることを示唆する研究結果が報告された。代謝異常関連脂肪性肝疾患(MAFLD)と慢性腎臓病(CKD)が併存している人は、既知のリスク因子の影響を調整してもIHD発症リスクが有意に高いという。札幌医科大学循環器・腎臓・代謝内分泌内科学講座の宮森大輔氏、田中希尚氏、古橋眞人氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に7月8日掲載された。

日本人2型糖尿病でのチルゼパチドの効果、GLP-1RAと比較/横浜市立大

 横浜市立大学 循環器・腎臓・高血圧内科学教室の塚本 俊一郎氏らの研究グループは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、新規GLP-1RAであるセマグルチドやGLP-1/GIPデュアルアゴニストであるチルゼパチドについて、従来の薬剤との比較や用量毎の治療効果の違いをネットワークメタ解析手法で解析した。その結果、チルゼパチドは比較した薬剤の中で最も体重減少とHbA1cの低下効果が高く、目標HbA1c(7%未満)の達成はチルゼパチドとセマグルチドで同等だった。Diabetes, Obesity and Metabolism誌2023年10月12日号の報告。

患者が油断しがちな健診結果の項目とは

 日本ベーリンガーインゲルハイムと日本イーライリリーは、各領域の専門医と連携し、健康診断で「要精密検査」や「要治療」といった異常所見があった際の二次検査の受診促進の取り組みとして、2023年10月17日に『ニジケンProject』を発足した。また、本プロジェクトの一環として二次検査に関する調査を実施したところ、3人に1人が健康診断の二次検査を「既読スルー」している現状であることが明らかになった。

CKDの腎と心血管疾患への悪影響はさらに広い範囲(解説:浦信行氏)

JAMA誌において、2,750万人余りを対象としたメタ解析の結果、CKDの悪影響は従来報告されている全死因死亡、心血管死、腎代替療法を要する腎不全、脳卒中、心筋梗塞、心不全、急性腎障害にとどまらず、あらゆる入院、心房細動、末梢動脈疾患にまで及ぶことが報告された。結果の詳細はジャーナル四天王のニュース記事をご覧いただきたいが、本研究はそれ以外にもいくつかの重要な成績が示されている。尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)とeGFRをクレアチニンのみで評価したものと、クレアチニンとシスタチンCで評価したものの各々の有害事象のリスクを対比すると、全体の傾向はヒートマップ上では同様であるが、クレアチニンのみで評価したeGFRでの結果は少し感度が悪い印象を受ける。eGFR各階層での有害事象のハザード比を表した図3においても、確かにクレアチニンのみで評価したeGFRでのハザード比の変化の傾きは緩徐であり、各有害事象に対する感度が対比上は低いと考えられる。かつ、各有害事象のハザード比は、クレアチニンでのeGFRは90~105を底値としてU字型を描いている。シスタチンCを加えたものではこのような結果を示していない。これはおそらく高齢者主体のサルコペニア・フレイル症例のリスク上昇を表すものと考えられる。したがって、症例によってはシスタチンCによるeGFRの評価を加えることが必須である。

アセトアミノフェンの処方拡大へ、心不全などの禁忌解除で添付文書改訂/厚労省

 アセトアミノフェン含有製剤の添付文書について、2023年10月12日、厚生労働省が改訂を指示し、「重篤な腎障害のある患者」「重篤な心機能不全のある患者」「消化性潰瘍のある患者」「重篤な血液の異常のある患者」及び「アスピリン喘息(非ステロイド性消炎鎮痛剤による喘息発作の誘発)又はその既往歴のある患者」の5集団に対する禁忌解除を行った。添付文書における禁忌への記載が、成書やガイドラインで推奨される適切な薬物治療の妨げになっていたことから、今年3月に日本運動器疼痛学会が禁忌解除の要望を厚生労働省に提出していた。

eGFR低下とアルブミン尿、腎不全や心血管疾患と関連/JAMA

 CKD Prognosis Consortiumの114コホートからの個人データを対象としたメタ解析において、血清クレアチニン(Cr)値に基づく推定糸球体濾過量(eGFRcr)あるいは血清Cr値と血清シスタチンC値に基づくeGFR(eGFRcr-cys)の低下、および尿アルブミン/クレアチニン比(UACR)の上昇は、腎不全や心血管疾患、入院等を含む10の有害アウトカムの発生率上昇と関連していることが示された。米国・ニューヨーク大学のMorgan E. Grams氏らCKD Prognosis Consortiumの執筆グループが報告した。米国では成人の約14%が慢性腎臓病(CKD)(eGFR低下またはアルブミン尿)に罹患しているという。しかしながらeGFRの低さやアルブミン尿の重症度と有害アウトカムとの関連性については不明であった。JAMA誌2023年10月3日号掲載の報告。

血尿診断で内科医も知っておきたい4つのこと―血尿診断ガイドライン改訂

 『血尿診断ガイドライン』が10年ぶりに改訂された。改訂第3版となる本ガイドラインは、各専門医はもちろんのこと、一般内科医や研修医にもわかりやすいように原因疾患診断のための手順を詳細な「血尿診断アルゴリズム」として提示した。また、コロナ禍での作成ということもあり、最終章では「新型コロナワクチンと血尿」について触れている。今回、本ガイドライン改訂委員会の事務局を務めた小路 直氏(東海大学医学部外科学系腎泌尿器科学)に、内科医が血尿時の問診や専門医への紹介を行ううえで注意すべきポイントなどを聞いた。

IgA腎症のメサンギウム領域に障害をもたらすIgA1は腸管由来が主体?(解説:浦信行氏)

 つい先日のNEJM誌オンライン版(2023年6月16日号)に、欧州における多施設共同研究であるCONVINCE研究の結果が報告された。その結果は、従来のハイフラックス膜の血液透析(HFHD)に比較して、大量置換液使用のオンライン血液透析濾過(HDF)は全死亡を有意に23%減少させたと報告された。それまでの両者の比較はローフラックスHDとの比較が多く、またHFHDとの比較では一部の報告では有意性を示すが、有意性がサブクラスにとどまるものも見られていた。また、置換液量(濾過量+除水量:CV)の事前設定がなされておらず、階層分析で大きなCVが確保できた症例の予後が良好であった可能性も報告され、患者の病状によるバイアスが否定できなかった。本研究においては目標CVが23±1Lと定められ、患者背景にも群間に差はなかった。そのうえでの予後の改善の報告は大変意義の大きいものである。