内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:129

家族性腺腫性ポリポーシス、新たな治療戦略を日本で開発(J-FAPP Study III)

 京都府立医科大学の石川 秀樹氏らが大腸がんの超高危険群である家族性大腸腺腫症(FAP)患者に対し、予防のための内視鏡的積極的摘除術を世界で初めて開発したことがEndoscopy誌2022年10月10日号オンライン版に掲載された。  結腸全摘は、FAPの標準治療であるにもかかわらず、若年層のFAP患者が手術を延期したり、手術を拒否したりするケースもあるという。そこで、同氏らはFAP にきわめて多発する大腸ポリープのダウンステージングを目的とする積極的な内視鏡的摘除(IDP)の有効性を評価することを目的に内視鏡的積極的摘除術の多施設共同介入試験(J-FAPP Study III)を実施した。本試験は22施設で実施した単群介入研究で、参加者は2012年11月24日~2014年9月25日の間に登録。結腸切除術を受けていない、または結腸切除術を受けたが大腸が10cm以上残っている16歳以上で、100個のポリープがあったFAP患者を対象とした。IDPでは、10mm以上の大腸ポリープが摘除され、続いて5mm以上のポリープが摘除された。主要評価項目は5年間の介入期間中の結腸切除術の有無、副次評価項目は内視鏡による穿孔/出血、結腸直腸がんの発生、内視鏡治療に適さない腫瘍の発生、結腸直腸がんおよびその他の原因による死亡だった。

直近1年のオンライン診療利用患者は2%未満、利用意向も低い

 9,000人超を対象としたアンケート調査で、直近1年のオンライン診療利用者は2%未満であり、利用経験者における今後の利用意向は高いものの、全体の利用意向は非利用意向よりも低いことが明らかになった。マイボイスコム株式会社は、「オンラインでの医療相談・診察」に関するインターネット調査を行い、その結果を2022年10月28日に公表した。 ・直近1年間のオンライン診療利用経験は1.8%であった。10代・20代では約6%、30代では約3%であった。 ・オンライン診療を知っているが利用したことはない人は75.3%で、オンライン診療を知らない人は20.7%であった。 ・オンライン診療を受けたきっかけや理由は、「かかりつけ医がオンラインでの診療や相談を実施していた」が41.0%で最も多く、「発熱・咳など新型コロナ感染の疑いがあった」21.3%、「待ち時間・通院時間をかけたくない」20.2%、「遠方の医師の診察を受けるため」18.0%、「新型コロナ予防のため医療機関へ行くのを控えたい」16.3%と続いた。 ・オンライン診療を受けた医療機関の探し方は、「かかりつけの医療機関がオンライン診療をしていた」が57.3%で最も多く、「インターネットでの検索」22.%、「保健所や自治体などの紹介」10.7%、「インターネット広告」8.4%、「自治体のHP、広報誌など」6.7%と続いた。

健康増進に必要な1日の歩数の考え方

 健康のためには「1日1万歩」歩くと良いとよく言われるが、それよりやや少ない歩数でも、健康の維持・増進につながる可能性が報告された。米ヴァンダービルト大学のHiral Master氏らの研究によるもので、詳細は「Nature Medicine」に10月10日掲載された。  報告された新たな研究では、6,000人以上の中高年米国人を最長7年間にわたって追跡。1日の歩数が8,000~9,000歩以上の人は、肥満、高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、胃食道逆流症、うつ病などの発症が少ないことが明らかになった。なお、歩幅にもよるが、1日8,000~9,000歩は、約4マイル(6.4km)の歩行に相当する。

老後の一人暮らしと認知症リスク

 米国・イリノイ大学シカゴ校のBenjamin A. Shaw氏らは、老後の一人暮らしと認知症発症との関連性を調査した。これまでの多くの研究では、単一の時点で得られた一人暮らしに関するデータを利用して検証されていたが、著者らは、高齢者の一人暮らしの状況を長期的に測定し、一人暮らしの期間が長いほど認知症発症リスクが高いかどうかを評価した。その結果、老後の一人暮らしは認知症の重大なリスク因子であるが、この影響はすぐに現れるわけではなく、時間とともに上昇する可能性があることが示唆された。The Journals of Gerontology誌オンライン版2022年9月30日号の報告。

慢性的なストレスはがんによる死亡と関連

 慢性的なストレスを抱えている人は、将来的にがんにより死亡するリスクが有意に高いことが、米国国民健康栄養調査(NHANES)の30年以上に及ぶデータの分析から明らかになった。人種、性別、病歴などの多数の要因を調整した後でも、生涯にわたるストレスにより、がんによる死亡リスクが14%上昇する可能性が示唆されたという。米オーガスタ大学ジョージア医学部のJustin Moore氏らによるこの研究の詳細は、「SSM-Population Health」9月号に掲載された。  Moore氏によると、慢性的なストレスとがんによる死亡との関連は、「アロスタティック負荷」に起因するという。人間の体には、急性のストレスに適応して身体の恒常性を維持する仕組みが備わっている(アロスタシス)。しかし、ストレス負荷が長引いたり過度になったりすると、身体の恒常性維持のバランスが失われ、それが原因で身体に障害が発生することがある。この負荷をアロスタティック負荷という。同氏によると、アロスタティック負荷は、BMIや高血圧、血糖値やコレステロール値など、さまざまな生体マーカーにより具体的な数字として測定可能だという。

新型コロナ飲み薬、心疾患治療薬との併用で相互作用の可能性も

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の飲み薬の1つである抗ウイルス薬のパクスロビド(一般名ニルマトレルビル・リトナビル、日本での商品名パキロビッドパック)は、高リスク患者を重症化から守ることで世界のパンデミックの様相を大きく変えた。そうした中、脂質低下薬や抗血栓薬、抗不整脈薬など、広く処方されている心疾患の治療薬とパクスロビドを併用するとリスクがもたらされる可能性を警告する論文を、米レーヘイ・ホスピタル&メディカル・センターのSarju Ganatra氏らが「Journal of the American College of Cardiology」に10月12日発表した。同氏は、「一部の心疾患患者はパクスロビドの使用を避けるか、同薬による治療を受けている間は心疾患の薬を減らす必要があるかもしれない」と述べている。

4割の米国成人がCOVID-19関連で虚偽の言動をしていた

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが現在より深刻だった昨年末に、米国人の40%以上が自分のCOVID-19既往歴や感染対策の実施状況について、虚偽の言動をしていたことが明らかになった。米ミドルセックス・コミュニティーカレッジのAndrea Gurmankin Levy氏らの研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に10月10日掲載された。  Levy氏らは、COVID-19の公衆衛生対策に関する虚偽の言動や、推奨される感染予防措置を守らない行動の頻度とその理由に関するオンライン調査を、2021年12月8~23日に実施。調査パネルに登録されている全米各地の成人の中から、COVID-19の既往のある人、COVID-19の既往がなく少なくとも1回はワクチン接種を受けた人、既往がなくワクチン接種を受けていない人がそれぞれ3分の1になるように、計2,260人に回答協力を依頼した。アンケートは、自分が感染している(またはその可能性がある)時に、直接会う人にそれを伝えたか否かなどの9項目の質問と、そのような行動を取った理由、および、信仰、支持政党などを含む社会人口学的因子に関する質問で構成されていた。

コロナ軽症でも、高頻度に罹患後症状を発症/BMJ

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症の急性期後6~12ヵ月の時期における、患者の自己申告による罹患後症状(いわゆる後遺症、とくに疲労や神経認知障害)は、たとえ急性期の症状が軽症だった若年・中年の成人であってもかなりの負担となっており、全体的な健康状態や労働の作業能力への影響が大きいことが、ドイツ・ウルム大学のRaphael S. Peter氏らが実施した「EPILOC試験」で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年10月13日号に掲載された。  EPILOC試験は、ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州の4つの地域(人口計約270万人)で行われた住民ベースの研究で、2020年10月1日~2021年4月1日にポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でSARS-CoV-2陽性と判定された18~65歳の集団が解析の対象となった(バーデン・ビュルテンベルク州Ministry of Science and Artの助成を受けた)。

GRADE試験―比較効果研究(comparative effectiveness research)により示されたGLP-1受容体作動薬の優位性(解説:景山茂氏)

GRADE試験は著者らが述べているように比較効果研究(comparative effectiveness research)である。糖尿病治療薬については2008年の米国FDAのrecommendation以来、新規に開発される薬物については治験段階から心血管イベントに対する影響が検討されている。これらの成果として、近年はGLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の臓器保護効果が検証された。しかし、これらはプラセボを対照とした試験が多く、必ずしも数多くある治療薬の中でどれがよいかを示すものではなく、また、それを目的として行われたわけでもない。

うつ病リスクに影響を及ぼす身体活動や睡眠時間

 うつ病リスク低下に対し、中程度~高度な身体活動(MVPA)のベネフィットは確立されてきているものの、睡眠、座位行動(SB)、軽度な身体活動(LIPA)に関するエビデンスは十分ではない。これらの行動は、行動学的および生物学的な相互関係を考慮せず検討されることも少なくない。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのJ. M. Blodgett氏らは、ある行動に費やした時間が、他の行動と比較し、どのようにうつ病リスクと関連しているかを調査した。その結果、あらゆる行動をMVPAに置き換えることで、うつ病リスクが低下することが明らかとなった。著者らは、「たとえ少しでも、MVPAに費やす時間の増加はうつ病の予防や軽減につながり、治療効果にプラスの影響を及ぼす可能性がある」と報告している。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2022年9月30日号の報告。  対象は、1970 British Cohort Study(英国の1970年出生コホート研究)より抽出した4,738例(2016年時、年齢46歳)。抑うつ状態の評価は、自己報告による受診および抗うつ薬の使用歴に基づき確認した。MVPA、LIPA、SB、睡眠の測定は、大腿部に装着した加速度計を用いて7日間連続で行った。さまざまな運動に費やされた時間構成とうつ病との関連を評価するため、コンポジショナルロジスティック回帰を用いた。