感染症内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:77

高齢者と基礎疾患のある成人に早期の3回目接種を

 2022年3月11日、モデルナ・ジャパン株式会社(以下モデルナ社)はメディアセミナー「この春の感染拡大を見据えた3回目追加接種の必要性~Long COVID リスク等も視野にいれて~」を開催した。  本セミナーでは、始めにモデルナ社 代表取締役社長の鈴木 蘭美氏より、コロナワクチンの開発と最新パイプラインについての説明が行われた。  コロナワクチンに関しては本年秋頃の追加接種の可能性を見込み、モデルナ社ではオミクロン株用を含む追加接種用の2価ワクチンを開発中だという。またmRNA医薬品創出技術を生かしたパイプラインについては、サイトメガロウイルス感染症ワクチン、MSD社と共同開発のがんに対するワクチン、アストラゼネカ社と共同開発の心臓発作時の損傷を防ぐ新薬など、グローバルで計44の新薬開発プロジェクトが進行している。パイプラインの中には新型コロナウイルス・インフルエンザ・RSウイルスに対する3種混合ワクチンも含まれており、2023年秋までの提供開始を目指しているという。  3回目接種と今後のワクチン開発について、鈴木氏は「できるだけ多くの方に3回目のワクチン接種を受けてもらい、免疫を備えてもらいたい。ワクチンのリーディングカンパニーとして、(今後の感染状況が)最悪の場合を想定して最善を備えたいと思っている。」と強く語った。

コロナ禍で医療従事者のビタミンD欠乏が顕著/国立成育医療研究センター

 日々の生活でビタミンDが不足すると免疫力を低下させる可能性があり、長期間の屋内生活での運動不足では骨粗鬆症への影響も懸念される。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が蔓延する環境下で、医療従事者の長期間の屋内生活での影響はどのようなものがあるだろうか。  国立成育医療研究センターの「ナショナルセンター職員における新型コロナウイルス感染症の実態と要因に関する多施設共同観察研究」グループは、感染者の易感染性や重症化要因を評価する目的で、COVID-19患者受け入れ病院である同センターのハイリスク医療従事者361人を対象に、2021年3月1日~5日に調査を行い、その結果を発表した。

オミクロン株BA.2、コロナ治療薬の有効性は?/NEJM

 現在、オミクロン株亜種BA.2は、デンマーク、インド、フィリピンなどの地域において、オミクロン株BA.1系統から置き換わり、主流になっている。近いうちに日本国内でもBA.1からBA.2に置き換わることが予想されている。国立感染症研究所の高下 恵美氏らの研究グループは、オミクロン株BA.2に対し、7種類の抗体薬と3種類の抗ウイルス薬について、in vitroでの有効性を検証した。本研究の結果は、NEJM誌オンライン版2022年3月9日号のCORRESPONDENCEに掲載。  研究対象となった薬剤は、FDA(米国食品医薬品局)で承認済み、日本で承認済みのものが含まれる。日本で承認済みの抗体薬は、イムデビマブとカシリビマブの併用(商品名:ロナプリーブ)、ソトロビマブ(商品名:ゼビュディ)、抗ウイルス薬は、レムデシビル(商品名:ベクルリー)、モルヌピラビル(商品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル(商品名:パキロビッドパック[リトナビルと併用])となる。

免疫不全者へのコロナワクチン、3回で抗体陽転率上昇か~メタ解析/BMJ

 免疫不全患者(血液がん、固形がん、免疫性炎症性疾患、臓器移植、HIV)は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの接種による抗体陽転率が免疫正常者と比較して低いが、1回目に比べると2回目接種後に改善され、3回目の接種は有効である可能性があることが、シンガポール国立大学のAinsley Ryan Yan Bin Lee氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2022年3月2日号で報告された。  研究グループは、免疫不全患者と免疫正常者においてCOVID-19ワクチンの有効性を比較する目的で、文献を系統的にレビューし、メタ解析を行った(特定の研究助成は受けていない)。  医学データベース(PubMed、Embase、Central Register of Controlled Trials、COVID-19 Open Research Dataset Challenge[CORD-19]、WHO COVID-19 databases)を用いて、2020年12月1日~2021年11月5日の期間に発表された試験が検索された。また、ClinicalTrials.govとWHO International Clinical Trials Registry Platformを検索して、2021年11月の時点で、これらのサイトに登録されているが未発表または進行中の試験が特定された。

オミクロン株に対するブースター接種、高齢者での効果は?

 高齢はSARS-CoV-2感染において罹患率および死亡率の主要な危険因子である。そのため、高齢者にはCOVID-19ワクチンを優先して接種する戦略をとる国が多い。ワクチンのブースター接種によってオミクロン株の中和活性を引き出すことが示されているが、高齢者においてはどうか。高齢者へのブースター接種の即時および長期の効果を見た試験結果がThe Lancet Infectious Diseases誌オンライン版2022年2月28日号のCORRESPONDENCEに掲載された。  ドイツ・ベルリンの開業医で募集された、年齢中央値82(範囲:76~96)歳の37例を対象に、SARS-CoV-2中和活性を縦断的に測定した。2021年1月15日に最初のワクチン接種が行われ、BNT162b2(ファイザー製)の2回目接種から10ヵ月後、ブースター接種から4.5ヵ月後までフォローアップされた。

ワクチン導入前のコロナ感染者致死率、医療レベル以外の要因が存在?/Lancet

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン導入および変異株流行前の感染者致死率(IFR)は、190の国・地域によって30倍以上のばらつきがあることが、COVID-19 Forecasting TeamのReed J. D. Sorensen氏らが実施したCOVID-19総死亡と血清有病率調査の系統的解析の結果、示された。とくに医療システムが良好な国で年齢標準化IFRが高かったことは、医療能力以外の要因が重要であり、その要因として介護施設におけるアウトブレイクやCOVID-19を重症化させる併存疾患などが考えられた。また、ワクチン導入前にIFR推定値の中央値が8ヵ月間で33%減少しており、COVID-19に対する治療が時間の経過とともに改善されていることを示唆するものである。著者は、「ワクチン導入前のIFRを推定することは、COVID-19による死亡パターンの進行を説明する重要な基礎を提供するものである」と述べている。Lancet誌オンライン版2022年2月24日号掲載の報告。

COVID-19入院患者における細菌の同時感染率は?

 COVID-19患者における細菌の同時感染や2次感染はまれであるということが、最近発表されたメタアナリシスや前向き研究で明らかにされている。しかし、これらの研究では、調査対象の患者の約70%に抗菌薬が処方されているという。国立病院機構栃木医療センターの駒ヶ嶺 順平氏らの研究グループは、COVID-19患者集団における細菌の同時感染率を明らかにするため、入院中の抗菌薬使用と同時感染の状況について後ろ向き横断研究により検討した。本研究の結果は、JAMA Network Open誌2022年2月18日号に掲載。

コロナワクチンのブースター、オミクロン株に最も有効なのは?/NEJM

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「ChAdOx1 nCoV-19」(AstraZeneca製)または「BNT162b2」(Pfizer-BioNTech製)の2回接種は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のオミクロン変異株(B.1.1.529)による症候性疾患への防御効果は限定的である。BNT162b2または「mRNA-1273」(Moderna製)ワクチンによるブースター接種によって、ワクチン有効性は大幅に増大するが、時間の経過とともに減弱する。英国健康安全保障庁(UKHSA:U. K. Health Security Agency)のNick Andrews氏らが、オミクロン株感染者約89万人を対象にイングランドで行った診断陰性(test-negative)デザイン法(TND)による症例対照試験の結果を報告した。オミクロン変異株によるCOVID-19症例の急増によって、現行ワクチンの有効性に関する懸念が生じている中で本検討は行われた。NEJM誌オンライン版2022年3月2日号掲載の報告。

新型コロナワクチン4種、6ヵ月後までの有効性をメタ解析/Lancet

 重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)への感染や、症候性新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発現に対する4種のワクチンの有効率は、完全接種後1ヵ月から6ヵ月までの間に平均で約20~30%低下するが、重症化に対する有効率の低下は約9~10%と小さいことが、世界保健機関(WHO)のDaniel R. Feikin氏らの検討で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2022年2月21日号に掲載された。  研究グループは、さまざまな臨床アウトカムに対するCOVID-19ワクチンの感染防御期間のエビデンスを系統的にレビューし、接種後の時間経過に伴うデルタ変異株に起因するワクチン突破型感染の割合の変動を評価する目的で、メタ回帰分析を行った(感染症流行対策イノベーション連合[CEPI]の助成を受けた)。  2021年6月17日~12月2日の期間に公表された査読済みまたは査読前の論文に関して、系統的レビューが行われた。対象は、COVID-19ワクチンの効能(efficacy)に関する無作為化対照比較試験と、COVID-19ワクチンの効果(effectiveness)に関する観察研究とされた。  ワクチンの完全接種を受けた集団における離散時間間隔での効能・効果について検討が行われ、事前に定義されたスクリーニング基準を満たした研究が、全文のレビューの対象とされた。

新型コロナウイルス感染症のメンタルヘルス関連の後遺症(解説:岡村毅氏)

新型コロナウイルス感染症の後遺症としてメンタルヘルス関連の症状は多い。この論文によると精神疾患の診断を受ける可能性は約1.5倍に、精神疾患に対する処方を受ける可能性は約1.9倍に増える。さらに、新型コロナウイルス感染症で入院した人に限ると、精神疾患の診断を受ける可能性は約3.4倍に、精神疾患に対する処方を受ける可能性は約5.0倍に増えるとのことだ。認知機能低下も約1.8倍に増えている点も注目したい。本研究では、新型コロナウイルスに感染した米国の退役軍人15万人強(平均年齢63歳、男性が90%)でコホートをつくり、これを新型コロナウイルスに感染していない同時代の退役軍人の対照群と比較している。さらに、この時代に生きる人は世界的パンデミックを体験しているが、われわれ皆がそうであるように人生観・世界観に大いに影響を受けている。そこでその影響を除くべく、新型コロナウイルス出現前の時代でも対照群をつくっている。さらにさらに、インフルエンザでの入院とも比較するという、用意周到なデザインである。