循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:5

脳の血栓溶解は24時間まで大丈夫?(解説:後藤信哉氏)

 灌流動脈の血栓性閉塞により臓器の虚血性障害が始まる。血液灌流の再開時には再灌流障害も起こるが、酸素化再開により機能を修復できる部分が大きければ血栓溶解療法の適応となる。循環器では心筋梗塞後6時間までが、当初再灌流の有効時間と考えられた。その後、灌流直後に動き始めない冬眠心筋(hibernation myocardium)、気絶心筋(stunned myocardium)など再灌流後長時間経過しても機能回復する心筋がみつからず、再灌流可能時間は発症後12時間、24時間と延びていった。  直感的に、脳の神経機能は心筋より虚血性障害に弱そうにみえる。また、再灌流後の脳出血リスクも心配であった。

肥満症治療薬のチルゼパチドで肥満者の血圧が低下

 肥満症治療薬のZepbound(ゼップバウンド、一般名チルゼパチド)の効果は、体重の減少や糖尿病コントロールの改善にとどまらないようだ。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター心臓病学部長のJames de Lemos氏らによる研究で、チルゼパチドを使用した肥満患者では収縮期血圧(上の血圧)が有意に低下し、同薬が肥満者の血圧コントロールにも有効である可能性が示唆されたのだ。チルゼパチドの製造販売元であるEli Lilly社の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Hypertension」に2月5日掲載された。

妊娠高血圧腎症疑い、PlGF検査の反復は有効か?/Lancet

 妊娠高血圧腎症が疑われる妊婦において、胎盤増殖因子(PlGF)に基づく検査を繰り返し行い、結果に基づく管理を行っても、周産期アウトカムは改善しなかった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのAlice Hurrell氏らが、イングランド、スコットランド、ウェールズの22施設で実施した無作為化並行群間比較優越性試験「PARROT-2試験」の結果を報告した。PlGF検査は、妊娠高血圧腎症の予測に関する高い診断精度を有しており、診断までの時間を短縮して母親の重度有害アウトカムを大幅に減少させるが、その反復実施について、臨床上の有益性は不明であった。著者は、「有害アウトカムの発生率が低い高所得国では、妊娠高血圧腎症が疑われるすべての妊婦において一律に繰り返しPlGF検査を行うことは推奨されない」とまとめている。Lancet誌2024年2月17日号掲載の報告。

医師が過小評価した心房細動、予後にどう影響?/慶應義塾大学

 医師による心房細動患者の健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連を調査した結果、医師は心房細動患者の健康状態を過小評価していることが少なくなく、過小評価している場合はその後の治療の積極性が低く、1年後の健康状態の改善が乏しいことを、慶應義塾大学の池村 修寛氏らが明らかにした。JAMA Network Open誌2024年2月5日号掲載の報告。  心房細動患者の症状・機能や生活の質を最適化することが、外来における主な治療目標であるが、これは医師が心房細動患者の健康状態を正確に評価することで可能になる。そこで研究グループは、医師による健康状態の評価と、その後の治療および転帰との関連性を調査するため、多施設共同前向きコホート研究を実施した。

RNA干渉薬zilebesiran、年2or4回投与で有意な降圧効果/JAMA

 軽症~中等症の成人高血圧患者において、zilebesiranの3ヵ月または6ヵ月間隔での投与により、3ヵ月の時点での24時間自由行動下収縮期血圧(SBP)の平均値が有意に低下し、この効果は最長で6ヵ月間持続することが、米国・シカゴ大学医学大学院のGeorge L. Bakris氏らが実施した「KARDIA-1試験」で示された。zilebesiranは、アンジオテンシンペプチドの主要な前駆体であり、全身血圧の重要な調節因子であるアンジオテンシノーゲンの肝合成を標的とするRNA干渉治療薬。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2024年2月16日号で報告された。

ブロッコリーが慢性炎症と死亡を低減?

 わが国において、2026年からブロッコリーが農林水産省の指定野菜(重要な野菜として位置付けているもの)に追加されることになった。そのブロッコリーが、全身の慢性炎症と死亡率の低下に関連していたことが、米国・サウスフロリダ大学のNicholas W. Carris氏らによって明らかになった。Journal of Medicinal Food誌オンライン版2024年2月14日号掲載の報告。  全身性の異常な炎症が続くことで、心血管系やがんなどのさまざまな疾患のリスクが上昇することが知られている。食事習慣の中には、炎症に関連するものもあれば、炎症を抑えて健康を改善するものもある。そこで研究グループは、慢性炎症と死亡率に関連する食品を特定するため、前向きコホート研究を実施した。

PCSK9阻害薬の処方継続率は?~国内レセプトデータ

 日本を含む諸外国で行われたさまざまな研究結果から、高コレステロール血症治療薬PCSK9阻害薬の使用は費用対効果が見合わないと結論付けられているが、果たしてそうなのだろうか―。今回、得津 慶氏(産業医科大学公衆衛生学 助教)らはPCSK9阻害薬の処方患者の背景や特徴を把握することを目的に、国内のレセプトデータを用いた後ろ向きコホート研究を行った。その結果、PCSK9阻害薬はエゼチミブと最大耐用量スタチンが併用処方された群と比較し、高リスク患者に使用されている一方で、PCSK9阻害薬を中断した患者割合は約45%と高いことが明らかになった。本研究結果は国立保健医療科学院が発行する保健医療科学誌2023年12月号に掲載された。

減量で糖尿病が寛解すると心臓病と腎臓病のリスクが下がる

 減量によって2型糖尿病が寛解すると、心臓と腎臓の状態にもメリットがもたらされる可能性のあることが明らかになった。寛解期間が限られたものであっても心臓病のリスクは40%、腎臓病のリスクは33%低下し、寛解期間がより長ければ、より大きなリスク低下につながる可能性があるという。アイルランド王立外科医学院(RCSI)のEdward Gregg氏らの研究によるもので、詳細は「Diabetologia」に1月18日掲載された。同氏は、「本研究は、糖尿病の寛解と糖尿病関連合併症のリスクとの関連を検討した初の介入研究の結果であり、糖尿病の寛解を達成可能な状態にある人たちにとって心強いニュースだ」と話している。

週3個以上の卵が脂肪性肝疾患と高血圧を予防?

 卵の摂取が脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)と高血圧症に対する保護的な効果を示し、週3個以上の摂取でそれらの発症リスクがより低くなることを、イタリア・Saverio de BellisのRossella Tatoli氏らが明らかにした。Nutrients誌2024年1月31日号掲載の報告。  卵にはミネラルやビタミンなどの豊富な栄養素が含まれているが、コレステロール含有量も1個当たり180~225mgと多いため、しばしば生活習慣病の“悪者”扱いされることがある。しかし、これまで卵の摂取と疾患、とくに脂肪性肝疾患のリスクとの関連を分析した研究は乏しく、さらにその結果には一貫性がない。そこで、研究グループは、脂肪性肝疾患や高血圧症の発症リスクに対する卵摂取の影響を調査した。

脳梗塞発症後4.5~24時間のtenecteplase、転帰改善せず/NEJM

 多くの患者が血栓溶解療法後に血栓回収療法を受けていた脳梗塞の集団において、発症から4.5~24時間後のtenecteplaseによる血栓溶解療法はプラセボと比較して、良好な臨床転帰は得られず、症候性頭蓋内出血の発生率は両群で同程度であることが、米国・スタンフォード大学のGregory W. Albers氏が実施した「TIMELESS試験」で示された。tenecteplaseを含む血栓溶解薬は、通常、脳梗塞発症後4.5時間以内に使用される。4.5時間以降のtenecteplaseの投与が有益であるかどうかについての情報は限られていた。研究の詳細は、NEJM誌2024年2月22日号で報告された。