循環器内科/心臓血管外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:126

院内心停止の生存率を左右する予後因子とは/BMJ

 院内心停止患者では、心停止前に悪性腫瘍や慢性腎臓病がみられたり、心停止から自己心拍再開までの蘇生時間が15分以上を要した患者は生存の確率が低いが、目撃者が存在したり、モニタリングを行った患者は生存の確率が高いことが、カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年12月4日号に掲載された。院内心停止は生存率が低く、臨床的知識の多くは院外心停止に関する豊富な文献からの推測だという。院内心停止と関連する心停止前および心停止中の予後因子の理解は、重要な研究分野とされる。

術後管理は手術を救えるか?―CABG編(解説:今中和人氏)-1156

「人間、左前下行枝さえ保たれていれば何とかなる」とはいうものの、冠動脈バイパス手術の中・長期的便益は、ひとえに開存グラフトによってもたらされるのであり、グラフトの開存維持はまさに死活問題。その重要因子の1つは内服薬で、何をどのくらい処方すべきか、いろいろと考案されてきた。古くはアスピリン、ビタミンK拮抗薬と、それらの併用に始まり、近年ではチエノピリジン系(クロピドグレル、チカグレロル)やOACの中でもリバーロキサバンの、単剤ないし併用といったところである。

non-HDL-C高値はCVD長期リスク上昇と関連/Lancet

 血中non-HDLコレステロール(non-HDL-C)値は、アテローム硬化性心血管疾患の長期リスクと強い関連があることが明らかにされた。ドイツ・University Heart & Vascular Center HamburgのFabian J. Brunner氏らが、欧州、オーストラリア、北米の19ヵ国、計44の住民ベースコホート(総被験者数52万4,444例)を含む「Multinational Cardiovascular Risk Consortium」データを基に行ったリスク評価・モデリング試験で明らかにした。これまで血中脂質値と心血管疾患の長期発生の関連、および脂質低下治療と心血管疾患アウトカムの関連については明らかとはなっておらず、研究グループは、心血管リスクとnon-HDL-C値(全範囲)の関連について調べ、長期的な心血管イベントに関連するnon-HDL-C値を推定するのに役立つツールを作成し、さらに脂質低下治療によるリスクの低下をモデル化する検討を行った。Lancet誌オンライン版2019年12月3日号掲載の報告。

今、心血管系疾患2次予防に一石が投じられた(解説:野間重孝氏)-1154

至適内科治療という言葉がある。冠動脈疾患は代表的な複合因子的な疾患である。喫煙、血圧、糖尿病、高脂血症等さまざまな因子が複合的に作用して疾病が形成される。こうした疾病に対しては、関係すると思われる諸因子を逐次徹底的にコントロールすることにより、疾病の1次・2次予防を図るやり方が考えられ、OMTと呼ばれた。冠動脈疾患に対しては大体90年代の半ばに確立されたといえる。冠動脈疾患に対するOMTの確立は、境界域の冠動脈疾患においては、場合により外科的治療や血管内治療の代替えとされるまでに発展した。一方、大変皮肉なことに、一旦OMTが確立した後はこれにプラスして何か新しい治療法を加えようとした研究は、ことごとくnegative studyに終わったといってよい。

メトホルミン「服用継続で問題なし」 海外でNDMA検出受け見解/日本糖尿病学会

 2019年12月10日、日本糖尿病学会は「メトホルミン塩酸塩における発がん物質の検出に対する対応について」(事務連絡 令和元年 12月9日 厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課および厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課)の発出を受け、文書を公表した。  わが国においては、今のところ従前通りにメトホルミンを服用しても問題はないとされている。日本糖尿病学会は、厚労省が出した「患者から本件について相談を受けた場合には、糖尿病に対する治療の必要性を説明するとともに、同剤の服用を中止しないように回答する」旨の事務連絡に沿った対応を呼び掛けている。

後期早産・妊娠高血圧腎症妊婦は即時分娩・待機ともに一長一短、新生児の長期予後には注意が必要(解説:前田裕斗氏)-1151

妊娠高血圧腎症(Pre-eclampsia)を発症した妊婦の至適分娩時期の決定においては、胎児の未熟性と母体合併症(脳血管障害や肝・腎機能障害)のバランスをとる必要に迫られる。34週0日〜妊娠36週6日までのLate-pretermと呼称される時期では胎児臓器が一通りできていることから重症妊娠高血圧腎症の妊婦については即時分娩が望ましいと考えられ、実際に多くの先行文献で確かめられてきた。今回の論文は重症の徴候がない妊娠高血圧腎症(臓器障害がなく血圧が160/110mmHgを上回らない)の妊婦について即時分娩と待機方針を比較したRCTである。主要エンドポイントは母体・新生児ともに合併症の複合アウトカムであり、詳細は別記事を参照されたい。

早発閉経、心血管疾患リスク増大の可能性/JAMA

 閉経後女性のうち、40歳になる前に早期の自然閉経/外科的閉経を経験した女性は、40歳以降に閉経した女性に比べ心血管疾患のリスクが、小さいとはいえ統計学的に有意に増加することが、米国・ハーバード大学医学大学院のMichael C. Honigberg氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年11月18日号に掲載された。最近のガイドラインでは、中年女性におけるアテローム性動脈硬化に基づく心血管疾患リスク評価の改善策として、40歳以前での閉経歴を考慮することが推奨されているが、確固としたデータはないという。

C-PTPとDダイマーで、肺塞栓症リスクの同定が可能/NEJM

 肺塞栓症で経過観察中の患者では、臨床的検査前確率(C-PTP)が低く、Dダイマー値<1,000ng/mLの場合、肺塞栓症リスクは低いことが、カナダ・マクマスター大学のClive Kearon氏らが行った前向き試験「PEGeD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年11月28日号に掲載された。いくつかの後ろ向き解析により、肺塞栓症は、C-PTPが低い患者ではDダイマー値<1,000ng/mL、C-PTPが中等度の患者ではDダイマー値<500ng/mLで除外されることが示唆されている。

乳製品摂取量と死亡リスクとの関連は? /BMJ

 米国・ハーバード公衆衛生大学院のMing Ding氏らは、3件の前向きコホート研究において乳製品の摂取量と全死亡および死因別死亡との関連を検証し、乳製品の総摂取量と死亡リスクに逆相関は確認されず、乳製品の健康への影響は代用の類似食品に依存する可能性があることを報告した。また、「わずかだががん死亡率の上昇が、有意ではないものの乳製品摂取と関連がみられており、さらなる検証が必要である」とまとめている。これまで、乳製品摂取と2型糖尿病、心血管疾患、がんなどさまざまな健康アウトカムとの関連が広く検証されているが、多くの研究で明らかな有益性あるいは有害性は示されていない。さらに、前向きコホート研究での乳製品摂取と死亡との関連に関するエビデンスは限定的であった。BMJ誌2019年11月27日号掲載の報告。

遠隔筋肉の虚血を誘導しても、急性心筋梗塞患者の予後は改善しない(解説:佐田政隆氏)-1150

骨髄に多分化能を有した幹細胞が存在して、骨髄細胞を梗塞心筋に注入すると心機能が改善するという動物実験がこの15年位前に次々と報告された。当初は、骨髄細胞が心筋細胞や内皮細胞に分化すると認識されていたが、現在のところは、注入した細胞がさまざまなサイトカインを分泌して、血管新生を促進したり心機能を改善するという説が主流になっている。いずれにせよ、多施設の臨床研究が次々と施行されたが、残念ながら、骨髄細胞の虚血心筋への移植が臨床経過を改善したという、はっきりとしたエビデンスがないのが現状である。